1月歌舞伎座『京鹿子娘道成寺』は、こってり壱太郎VSさっぱり右近のダブルキャスト!
「落ちるの一秒、ハマると一生」と言われる歌舞伎沼。その深淵をのぞき、沼への入り方を指南するこの連載。今月紹介するのは、1月歌舞伎座『京鹿子娘道成寺』(きょうかのこむすめどうじょうじ)で、白拍子花子(しらびょうしはなこ)をダブルキャストで勤める中村壱太郎さんと尾上右近さん。花形俳優の中でも、踊りが抜群にうまい実力者二人が、女方舞踊の最高峰と言われる作品に挑みます。二人はこの大曲にどうアプローチするのか。また、2月の松竹座、3月の南座とタッグを組む仲よしの二人のブロマンスに、バイラ歌舞伎部のまんぼう部長とばったり小僧が斬り込みます!! 【写真】壱太郎さんと右近さん、二人で道成寺に参拝
写真右・中村壱太郎(なかむら・かずたろう)●1990年東京都生まれ。屋号は成駒家。1995年1月、大阪中座で初代中村壱太郎を名のり初舞台。2014年9月、母の吾妻流三世宗家襲名と同時に吾妻徳陽として七代目家元を襲名。父は四代目中村鴈治郎。祖父は人間国宝の四代目坂田藤十郎、祖母は元宝塚女優で、参議院議長も務めた扇千景。 写真左・尾上右近(おのえ・うこん)●1992年東京都生まれ。屋号は音羽屋。清元宗家の次男として誕生。役者を志し、2000年、歌舞伎座にて初舞台。七代目尾上菊五郎の元で修行を積み、2005年1月、新橋演舞場で、二代目尾上右近を襲名。2018年2月、清元節の名跡・清元栄寿太夫を襲名。曽祖父は六代目尾上菊五郎。母方の祖父は鶴田浩二。
■『京鹿子娘道成寺』は、こってり壱太郎VSさっぱり右近の対決!?
まんぼう部長 壱太郎さん、右近さん、このたびは歌舞伎座での『京鹿子娘道成寺』(以下、『道成寺』)ご出演、おめでとうございます!! 1月の前半を壱太郎さん、後半を右近さんと、白拍子花子をダブルキャストで勤められますね。12月には、作品にゆかりのある和歌山県の道成寺にお二人で成功祈願にいらしたそうですがいかがでしたか? 壱太郎 『道成寺』は何度か踊っていて、道成寺に伺うのは3度目だったんですけれど、今回はあらたな緊張感に包まれましたね。これまでは、僕が家元を務める「吾妻流」の舞踊として『道成寺』を踊りましたが、今回は歌舞伎役者が踊る歌舞伎の『道成寺』で、表現の方法は180度違います。あらためて身が引き締まりました。 右近 僕は2023年の自主公演で『道成寺』をやるにあたって、訪れたばかりだったので、お礼参りに来たような不思議な感覚になりました。もちろん自主公演では、本興行でやることを目指してやりましたけれど、「次はいつ来られるかな~」と思っていたので、こんなに早く実現して、こうしてすぐに道成寺に伺えたことにただならぬご縁を感じました。 部長 『道成寺』は女方舞踊の最高峰とも言われる大曲中の大曲です。人気の舞踊なのでよく上演されていますが、過去に歌舞伎座で『道成寺』を踊った方々を見ると、すごい方ばかりです。それを若いお二人が踊るというのは大抜擢なのではないでしょうか?