1月歌舞伎座『京鹿子娘道成寺』は、こってり壱太郎VSさっぱり右近のダブルキャスト!
『男女道成寺』(令和4年9月大阪松竹座)で、白拍子花子を勤める中村壱太郎さん。う、美しい!! たおやかな中にも凛とした強さがあって、本当に素敵です。©松竹
壱太郎 歌舞伎座でやるから大抜擢ということは、あまり意識していないです。歌舞伎座を軽視するという意味ではなくて、僕はやはり上方(関西)の人間なので、歌舞伎座にお邪魔させていただきますという気持ちと、これを関西に持って帰るぞという思いがあるので。ただ、歌舞伎座は大きな劇場なので、表現も大きくいかないといけないなと。歌舞伎座ということで意識するのは、そこですね。 右近 僕は歌舞伎座で『道成寺』を踊るというのはひとつの目標だったので、すごくうれしいです。 一方で、この世代が歌舞伎座で大役をやるのが「大抜擢」ではなくて、「当たり前」だと思っていただけるように、堂々とやりたいですね。1月は先輩方もたくさん出ていらっしゃいますけれど、そこに埋もれる気はない、という強い思いで勤めたいです。 壱太郎 うん、それは本当にそうだね。 ばったり小僧 今回は、お二人はどなたにお稽古していただいたんですか? 壱太郎 二人とも藤間流御宗家(藤間勘十郎さん)にお習いします。 小僧 ということは、同じ型を踊るということですか? 右近 いや、それが違うんですよ。僕は自主公演のときにも勘十郎さんにお稽古していただいたんですけれど、「ここ、どっちでやりたい?」という感じで、ひとつのパートに複数の選択肢があるんですね。だからそれを組み合わせると、限りないパターンの振付けがあるんです。
『京鹿子娘道成寺』(令和5年8月浅草公会堂)で、白拍子花子を勤める尾上右近さん。う~ん、あ・で・や・か!! エネルギッシュで躍動感あふれる踊りから、目が離せませんっ。撮影:田口真佐美 ©研の會
壱太郎 だからまさに「コース料理」なんです。メインは魚ですか、牛肉ですか? 牛肉にフォアグラのせますか、のせませんか?っていう感じで(笑)。あ、ただしこのスープは、決まっていて変えられないんですよねって。 右近 そうそう。このスープは、この店のウリだから、これは変えないほうがいいですよって。 壱太郎 さらに自分でも調べていくと、「あれ、そんな隠れメニューがあるんだ」っていうのもあるし。すごく勉強しがいのある演目だと思います。 部長 じゃあ、そのコースの選び方に個性が出てくるんですね。 壱太郎 そうですね。ケンケン(右近さんの愛称)が自主公演で踊った『道成寺』を拝見できたことも大きな刺激になりました。ケンケンは、やっぱり音羽屋の人間だから、音羽屋の型が中心になっていて。じゃあ、自分はどこを目指そうと考えた結果、今回の僕のテーマは、「こってり」。ひたすらこってりいきたいなと思います。 部長 壱太郎さんのこってり、みんなの大好物ですから!! 一方の右近さんのテーマは? 右近 僕は「さっぱり」です。キリっといきたいですね。別に意図して違うものにしたわけではないんですけれど、自分に合うものを選択していくと、そうなったという感じ。 小僧 右近さんのキレッキレの踊り、めっちゃシビレます!! これは全然違う『道成寺』になりそうで超楽しみです。お二人の踊りを見比べるためにも歌舞伎座リピートしなくっちゃ!!