「妊娠の仕組みがわからない」――「不十分な性教育」に気づいた大学生たちの学び #性のギモン
「少しも恥ずかしいことではない」 考えが変わった、性との向き合い
知らないでいると、間違った情報を信じてしまうこともある。学生の書いた「履歴書」にはこういうものもあった。 「小学校の頃、妊娠はパンツを一緒に洗濯することで起こると習った。私は、それを中3まで信じており、性交の概念すらなかった」 新垣さんはゼミでセクシュアリティ教育に出合い、こう感じた。 「知らなかったではすまないな、と思いました。もっと早く知りたかった。それまでは親と性について話すのも気まずい感じがしていましたが、これは少しも恥ずかしいことではないと考えが変わりました。知らなくていいことはないと思いました」 新垣さんの周りで、若くして母となった女性は一人ではない。 「妊娠して高校をやめて結婚しても、数年で母子家庭になってしまう。そしてお金がないから夜働く。そういう負の連鎖が断ち切れないのが現状だと思います」
大学で思いがけず妊娠 教員から「こういう相談はよくある」
性の健康と権利を学ぶ場づくりや情報発信をしているNPO法人「ピルコン」。その代表である染矢明日香さん(37)は、20歳のときに思いがけない妊娠を経験した。 「当時、大学の教員に相談すると『こういう相談はよくある』とのことでした。悩んだ末に中絶の選択をしました。それはとてもつらい経験でした」 ピルコンにも思いがけない妊娠の相談はある。 「周りに言えない、親や先生に知られたくないという子が多い。そうした相談には、『産むか産まないかは自分で決める権利がある』と伝えて、年齢にもよりますがプライバシーに配慮しながらアドバイスをしています」 NHKが研究グループ「SRHR Japan」と共同で2022年8月にネット上で行った調査(18歳から74歳の男女2836人が回答)によると、自身やパートナーが「意図しない妊娠をしたかもしれない」と不安になったことがあると回答した割合は38%、うち20代以下の女性が56%と最も高かった。 ピルコンのサイトでは性の健康に関する情報も提供しているが、男性のからだについてのページへのアクセスが、全体の半分にものぼるという。 「間違った情報も多く流布していますし、男性は気軽に相談できるところがより少ないのかもしれません。マスターベーションをしすぎると死ぬ、ニキビが増える、体に悪い、ハゲるなどと信じている人もまだ多い。講演で話すと『聞けてよかったです』と言われます」 性別にかかわらず性の知識が足りない現状について、染矢さんはこう言う。 「知識がないのは本人の責任と切り捨てていいものではなく、それを伝えてこなかった社会の責任も大きいです。性について知っているか知らないかは、人生にすごく関わると思います」