銃乱射事件で殺されたウジ君が語り出す……AIで復活した故人を社会活動に参加させることはどこまで許されるか
■ 再生ボタンを押すと語り出す銃乱射の被害者 ハーイ、僕はウジ・ガルシア! 好きなのはビデオゲーム、冗談を言って友達を笑わせること、家族とトランポリンでジャンプすること。僕はユバルディにあるロブ小学校の4年生です。もしくは、少なくともそうでした。AR-15を手にした男が僕の学校に来て、18人のクラスメイトと2人の先生、そして僕を殺した時には。 そう、彼は米国で繰り返し発生している、銃乱射事件の被害者なのである。 「彼自身」が語っているように、ウジ君は2022年5月にテキサス州ユバルディ市の小学校で起きた事件に巻き込まれ、10歳という若さで亡くなった(AR-15というのはライフル銃の名前で、米国の銃乱射事件においてたびたび使用されている銃のひとつだ)。ウジ君からのメッセージは、もちろんAI技術によって生成されたものである。 このショットラインというサイトは、2018年2月にフロリダ州のマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で起きた銃乱射事件の被害者家族らが、事件の6周年を機に立ち上げたもの。この事件以外にも、先ほどのウジ君のケースのように、さまざまな銃乱射事件の被害者の声を(関係者の同意を得た上で)AI技術で再現。自分たちがどのような人物で、なぜ亡くなることになったのかを語らせている。 その目的は、感傷に浸ることではない。先ほどの音声を再生する部分の下には、「議会に電話する」というボタンが用意されていて、それを押すと米国の郵便番号の入力を求められる。郵便番号を入力すると、その地区から選出された議員の氏名が一覧表示されるので、そこから1人を選ぶと、自動でその議員の事務所に電話が掛けられるという仕組みになっている。 そして実際に電話すると、いま聞いた銃乱射事件被害者の声が流れ、議員たち(実際にはその事務所スタッフになるだろうが)も同じストーリーを聞くことになるという仕組みだ。