銃乱射事件で殺されたウジ君が語り出す……AIで復活した故人を社会活動に参加させることはどこまで許されるか
■ AIで続々と「復活」する被害者 カンザスシティが2024年10月に開始したこの「Unfinished Legacies」キャンペーンは、フェンタニルの被害に関する啓蒙活動である。冒頭の映像などの関連コンテンツは、広告代理店BarkleyOKRPとの提携により開発された。 その最大の特徴が、ディープフェイクなどの各種AI技術を活用して、フェンタニルの犠牲者自身が登場する画像、音声、動画を制作している点である。 報道によれば、犠牲者の背格好に似た俳優に脚本を演じてもらい、それにAI技術で生成した顔や音声を重ね合わせるという仕組みとのこと。先ほどの映像に登場したジョーダン・コバーンの他にも、ジェイデン・アンダーソン、ビクター・アバロス・マルモレホという人物を再現したコンテンツが、家族の同意を得た上で制作されている。 それぞれのコンテンツは、AIによって「復活」した彼ら被害者たちが自らのストーリーを語り、その選択を悔いるという内容となっている。 さらにこのキャンペーンでは、被害者のソーシャルメディアアカウントを使用してメッセージを配信することで、口コミでコミュニケーションが広がることを目指している。 当局主導のキャンペーンだが、上から一方的にメッセージを押し付けるのではなく、3人の犠牲者のリアルな姿を通じて、人々が自分事としてフェンタニル被害を受け止めてもらおうという狙いだ。 この「AIによって故人を復活させてメッセージを語らせる」という手法は、公共機関によるキャンペーンとしては、今回のUnfinished Legaciesが初めてのこと。だが、民間団体によるものとしては、過去にも同様の手法が取られたキャンペーンが存在している。 それが今年2月から米国で行われている、「ザ・ショットライン(The Shotline)」というキャンペーンだ。 その公式サイトにアクセスすると、少しスクロールしたところに、複数の人物の顔がモノクロ画像で表示されている部分があるのが分かるだろう。下のスクリーンショットは、表示される人物の1人「ウジ・ガルシア(Uziyah Garcia)」君の画像だ。 真ん中にある再生ボタン(右向きの黒い三角形)を押すと、このウジ君の声と思われる音声が流れるようになっている。そこで彼が語るのは、次のような内容だ。