声優・三輪勝恵さんが逝去 死因の「肺塞栓症」になりやすい人の特徴や予防法を医師が解説
肺塞栓症の予防と注意点
編集部: 肺塞栓症は完治するのでしょうか? 甲斐沼先生: 肺塞栓症は、重症の場合には比較的死亡率が高い病気だといえます。しかし欧米のデータによれば、未治療の状態では死亡率が30%程度と高いものの、しっかりと治療が行われている場合は2~8%と低いことが分かっています。 早期発見や早期治療によって死亡率が下げられるといえるでしょう。急性期を無事に乗り切れた場合には予後も良好だといわれているため、完治を目指すにはやはり早期に発見をして迅速に治療を開始することが重要です。 編集部: 予防方法を教えてください。 甲斐沼先生: 肺塞栓症はエコノミークラス症候群という別名があることからも分かるように、狭い場所で足を動かしにくい状況で起こりやすくなります。そのため飛行機での旅行中だけではなく、車での長時間の移動や同じ姿勢でデスクワークを行う場合にも注意が必要です。 リモートワークなど1人で作業を行う場合、つい熱中して長時間席を立たずに作業を行うケースもあるでしょう。同じ姿勢を続けると血流が悪くなるため、デスクワーク時などは時間を決めて立ち上がるのがおすすめです。 室内を歩き回ったり、軽くストレッチをしたりするだけでも一定の効果があります。立ち上がるのが無理な場合は、足を上下に動かすとよいでしょう。 また、水分不足でもリスクが高まる可能性があるため、こまめに水分を補給することも大事です。アルコールやコーヒーなどを摂りすぎると脱水になる危険があるため、長時間のフライトの時などにはなるべく控えるようにしましょう。 手術後や入院中などで肺塞栓症のリスクが高い方の場合には、病院の判断で運動療法や抗凝固療法などが行われることもあります。 編集部: 肺塞栓症と診断された場合、日常生活での注意点はありますか? 甲斐沼先生: 肺塞栓症と診断され、症状が落ち着いた後も再発には注意する必要があります。 良くなってからも油断をしたり無理をしたりせず、再発の兆候がないか注意しながら過ごすことが大切です。長時間同じ姿勢を取り続けないようにして、血流が悪くならないように気を付けましょう。 食事や水分をしっかり摂ることも大事です。必要な水分は年齢や体型などによって異なりますが、1日に1リットル程度摂ることが理想的とされています。 また、下肢にむくみや痛みなどが出ている場合、血栓ができている可能性もあるため注意が必要です。血栓の予防には、弾性ストッキングの着用も効果的だとされています。ただし、これらは一般的な注意点です。 症状や重症度によっても取るべき対策は違ってくるため、日常生活の過ごし方や注意点を必ず医師に確認しておくようにしましょう。 編集部: 最後に、読者へメッセージをお願いします。 甲斐沼先生: 肺塞栓症は重症になると命を落とすこともある怖い病気ですが、同じ姿勢を長時間続けることでリスクが高まるため誰にでも起こりうるといえます。 肺塞栓症が注目を集めたのは、震災時に車で寝泊まりしていた方たちが発症するケースが相次いだことでした。 近年ではリモートワークが増えていることもあり、自宅でも発症のリスクが高まったといえるのではないでしょうか。若い方でも発症する可能性がないとはいえないので、自分には関係ないことだと思わずに予防を心掛けてください。 時間を決めて足を動かすことが大事なので、運転中や仕事中にはこまめに休憩を取るようにして、軽いストレッチなどを行いましょう。