「レプリコンワクチン」は本当に安全なのか 科学的根拠をもとに医師が解説
レプリコンワクチンの科学的根拠 海外で承認されていない理由とは
編集部: 実際の臨床試験のエビデンスは示されているのですか? 山田先生: 1万6000人を対象とした試験では、新型コロナウイルスの発症予防効果が約56%、重症化予防効果が約95%であると、Nature Communicationsという学術誌に報告されています。 また、ファイザーのmRNAワクチンと比較した試験では、少なくともワクチンでできる抗体の量は劣っていないことが証明され、一部の変異株に対しては優れている可能性もあると報告されています。 編集部: 海外でのレプリコンワクチンに対する動きについて教えてください。 山田先生: つい最近、欧州医薬品庁(EMA)に欧州医薬品委員会(CHMP)が販売承認の勧告を出し、承認される見通しであることが発表されました。ほかにも、現在承認に向けてのプロセスを踏んでいる国は複数あります。 日本は世界に先駆けて承認されており、欧州での承認は科学的な有効性と安全性を追認した形となります。 さらに、新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザやがんの領域におけるレプリコンワクチンの研究もされており、様々な分野で活発に研究がおこなわれている画期的な技術と言えると思います。 編集部: レプリコンワクチン以外の選択肢もあるのでしょうか? 山田先生: 現在のところ、レプリコンワクチンは十分その承認に値するワクチンであることが証明されていますが、このような話を受けても、不安に感じる方はいらっしゃると思います。 必ずしもレプリコンワクチンの接種を受けなければならないというわけではなく、既存のmRNAワクチンや組換えタンパクワクチンという選択肢もあるので、自分の考えに合ったものを選んでいただければと思います。
「シェディング」は本当に起こる? 気になるレプリコンワクチンの副反応について
編集部: 副反応についてわかっていることを教えてください。 山田先生: 副反応については、重篤なものの発症率は1%未満とされています。また、多くの方が懸念する発熱に関しても、重度の発熱は1%未満で、軽度の発熱を含めても6%程度の発生率と比較的少ない頻度であると報告されています。 追加接種時の副反応についても、これまでのワクチンと同程度の発生頻度であるとの報告がされています。 編集部: 一部で「シェディング」を心配する声が上がっていますが、本当に起こるのでしょうか? 山田先生: シェディングとは、ウイルスが体外に排出されることを表す言葉で、これがほかの人に感染させる懸念となります。 しかし、レプリコンワクチンの場合、体内で作られているものは、ウイルスではなくその一部であるスパイクタンパク質のみです。そのため、ウイルスが体の外に出て、他人に感染するような懸念はないと言ってよいでしょう。 編集部: レプリコンワクチンの懸念点をあげるとするとどのような点ですか? 山田先生: 臨床試験によって1万人単位で評価がおこなわれたとはいえ、数十万、数百万人規模で接種を進めた場合、非常に稀な副反応が見つかる可能性はあります。 ただし、最終的に体内で生成されるものはこれまでのワクチンと同様であるため、そのような稀な副反応はこれまでのワクチンで観察された範囲内のものではないかと考えられます。 編集部: ほかに懸念されていることは何かありますか? 山田先生: 例えば、免疫抑制剤などを使用している方では、mRNAの自己増殖期間が通常より長くなるのではないかという懸念があります。また、妊婦への接種による胎児への影響については、今後さらなるデータの蓄積が必要だと思われます。