「理想は90年代のマイクロソフト」…経済評論家・山崎元さんが息子に残した「株式で稼ぐ働き方」
2024年1月1日、経済評論家の山崎元さんが食道がんのため逝去されました。1年が経ち、山崎さんが書き下ろした最後の一冊『経済評論家の父から息子への手紙』(Gakken)は、「人生のマニュアル」として多くの反響を呼んでいます。本書の中で山崎さんはこれからの働き方、そしてお金の稼ぎ方についてアドバイスを送っています。ただ会社員として「時間の切り売り」するのではなく、「株式」にかかわることで効率的に増やしていく方法を提案する山崎さん。その内容について、特別にご紹介しましょう。 【写真】PayPay、楽天、メルカリでポイント運用をしてみたら…その意外な結果
「株式で稼ぐ働き方」を実践しよう
「株式」に上手く関わって稼げと述べた。株式運用でお金を「増やせ」、というのではなく、株式ないし株式に連動する形で報酬を得て「稼げ」ということだ。君は、具体的にはどうしたらいいのか? 手紙では、「起業でも、ベンチャーへの参加でも、ストックオプションをくれる会社への転職でもいい」とも述べたのだが、整理して伝えよう。 次の4つの方法がある。 (1)自分で起業する (2)早い段階で起業に参加する (3)報酬の大きな部分を自社株ないし自社株のストックオプションで支払ってくれる会社で働く(外資系企業に多い) (4)起業の初期段階で出資させてもらう 順に説明しよう。 (1)自分で起業する 自分で会社を興し、この会社の株式を公開して、株式の価値によって大きなお金を得る。まずは、このパターンが王道だ。長者番付の上位だけでなく、長いリストには延々と成功した起業家株式長者の名が並ぶ。 新しいビジネス(「サービス」あるいは「商品の販売」)を思いついたら、会社を作って人を雇い、拡大することを目指す。まずは、これが基本だ。 ただし、起業の成功確率は、古来、そう大きなものではない。 かつて経済学者のケインズは、有名な『雇用・利子・貨幣の一般理論』の第12章で、経済における起業家の役割の重要性を指摘しつつも、起業それ自体の成功確率が小さくて経済的期待値が良くないこと、それにもかかわらず起業しようとする人材が現れることに半ば呆れながら感心している。 後者については、「アニマル・スピリッツ」によるとでも言うしかないと記して、経済学的な説明を放棄している(だが、幸い現代にも「アニマル」はいる)。 はたして、そのような割の悪い行動を、息子に勧めていいのか? 「いいのだ」と今なら自信を持って言える。 まず、起業のコストが下がった。かつての製造業中心の産業構造の下での起業に比べて、インターネットを使った情報サービスを筆頭に、最近のビジネスの起業はかつてほどの資金を要しない場合が多い。 しかも、公的な資金も含めて資金の調達はかつてよりも容易だ。株式会社を作る上での資本金も、かつては1000万円必要だったが、今や資本金は「1円」でもいい。 また、株式公開が容易になったおかげで、起業の成果を早く大きな金額で手に入れることが可能になった。かつて、起業して一代で株式公開まで漕ぎ着けることは相当な難事業だったが、今はずっと容易だ。