肌の科学者・次田哲也の提言。年を重ねる程、見た目に差が出てくるサイエンスな理由。
お手入れしているか、してないか。40代はその差が光の反射率となって如実に現れてくる
大人になると、その人が普段どのくらい美容に手をかけているかが、見た目に如実に現れるようになります。その差はどこから来るのでしょう? 肌の科学者・次田哲也さんに聞いたところ「光の反射率」という答えが返ってきました。 「光の反射率は、右にある数式『クベルカ・ムンクの式』で表すことができます。肌から放たれる光は加齢と共に、質と色調、ふたつの面で変化が出てきます」 まずは光の質。これは読者の皆さんもよくご存じのことでしょう。肌のキメが整っていれば光が均一に反射してキレイ。一方でキメが乱れていると影の部分ができ、肌の〝粗〟が強調されます。乾燥などによって肌表面の凹凸が増えると光の質は低下していきます。 そして色。肌色は、肌に光が当たったときに反射して視覚に届き、色として認識されます。ヒトの肌色には、黄色や赤や青、さまざまな色が含まれます。それぞれの色の反射率に分けることを「分光反射率」といいます。 「計測器を使って肌の白い人と黒い人との分光反射率を比較すると、赤色の部分に大きな差が見られます。つまり肌の赤みは個人差が大きく、見た目印象を左右するといえます。さらには、肉眼でも赤みは捉えやすいという色彩的な特徴があります。黄ぐすみ・日焼けなどと比べ赤みムラは目立ちやすいのです」 赤みムラは、肌内部の毛細血管が透けて見えることで起こります。毛細血管が肌内に均一に分布していてスムースに流れていれば問題がないのですが、血管の流れに滞りが出たり不均一な部分ができると、赤くくすんだムラとなって見えてしまいます。 「実は、肌内の毛細血管は加齢によってかなり大きく状態が変化します。まず、20代と比べて60代以降では毛細血管の量が4割も減ってしまうというデータがあります。一方で、血管の長さは5割以上増えてしまうのです」 どういうことかというと、肌の中に血液を流す〝良い水路〟は減る反面、詰まったり途中でとぎれてしまうような壊れかけの〝悪路〟は増え、肌のあちこちに無秩序に散らばってしまいます。そうなると乱れた状態が赤黒い滞りとして透けて見えてしまうのです。 「ただ、〝悪路〟はお手入れによってある程度整備できます。というのも、毛細血管は体表近くを走っているので、肌の上から刺激することができる臓器だからです。マッサージをしたり、血流促進成分入りのコスメを使ったりすることで、血管を反応させて血流の状態を改善することができます」 つまりは、見た目印象に直結する「老化の赤」は、ケアによって退治することが可能。何もしなければどんどん増えていくけれど、自分の手で摘み取ることができる。だからこそ、年齢を重ねる程にその差は開いていくというわけです。 「毛細血管の流れを良くすると、当然ながら細胞のひとつひとつに栄養や酸素が行き渡り、肌が健康な状態になってキメも整っていきます。つまりは、色と同時に光の質まで向上させることができる、とても効率の良いお手入れだといえます。さらに保湿も強化できたら、ますますキメの状態は良好に。そこで、コスメを塗るときは手のひらで肌を包み込んで温めるハンドプレスを。1品につき90秒かけてジワジワとなじませましょう。コスメは温かく密閉された状態で浸透が高まります。簡単なことを継続することが大事です。朝晩1日2回毎日続けたら、10年後には大きな差となって肌が輝くはずです」