〈日本人の海外流出は危機なのか?〉固定観念を乗り越え多様性で日本社会の変革を
私は、様々な意見や考え、様々な国の人材が混ざり合うことに大きな価値があると感じている。米国が常にダイナミックで活力に溢れているのは、世界中の人々が米国を目指し、多様な人々が混ざり合っていることが大きな要因ではないだろうか。 私たちは、日本人の海外流出=危機という固定観念から抜け出し、もう一段高い視点から、「異なること」に寛容さを持ち、真の意味で多様性のある日本を目指していくべきではないだろうか。 憂うべきは、居心地の良い日本に安住して現状維持を続け、変化を好まない人が増えていること、海外に対して興味を失っている人が増えていくことだろう。
分水嶺に立つ日本持続的発展のカギとは?
──円安や経済的理由から、海外に行くことが困難になりつつある。 得能 確かにそうした面はある。ただ、24年6月末時点で、在留外国人数は約359万人いるとされ、日本各地には各国の人々が集まるコミュニティーが存在している。 海外在住経験のない日本人が、外国語の飛び交うコミュニティーの中に飛び込むことは難しいかもしれない。しかし、そのコミュニティーの中で、例えば、共通の趣味を持つ個人と接点を持ち、その関係を起点に「面」として広げることで、日本にいながらも、海外と同じような経験をすることも十分に可能である。足元のリソースを見直すべきだろう。 ──多様性は大事だが、言動が一致せず、迷っている日本人が多い。 得能 何度でも強調するが、日本が次のステップに進むためには多様性が必須だ。同質な人とばかり付き合っていては、同じ考えからはみ出ることが許されず、新たなもの、新たな発想は生まれにくい。 多くの日本人が今後の国や社会の発展のためには多様性が必要という認識は持っているのに、実際には変化を嫌い、現状維持を続けるならば、日本は人口減少と相俟って、静かに衰えていくことになるだろう。 大学の研究者などが海外を目指す動きがある。これは、日本という「国」自体に原因があるというよりも、そのような人々が活躍できる「環境」がないことも原因の一つである。 ただ、もし日本に同じような環境があったら、日本で研究したいと考える人も必ずいるはずである。それは、日本企業でも同様である。 日本が持続的に発展していくためのカギは、多様性の実現に振り切れるかどうかにかかっている。日本は今、その分水嶺に立っている。
野口千里,大城慶吾