生きていたら59歳。今、夫・尾崎豊に伝えたい言葉をランタンに書き天に放った妻・繁美の想い
33回忌という大きな節目を超えて
2024年を振り返ってみると、今年、私にとっての一番大きなイベントは、やはり豊の33回忌をこの4月に迎え無事に終えたことでした。また、アーティストとしては、昨年の12月3日から豊のファーストアルバム『17歳の地図』と、尾崎豊デビュー40周年だったということもあります。 私にとって、豊の「33回忌」はとても大きな節目で、人生の指針と考えてきました。これまでの自分の人生を改めて振り返ると、私が24歳の時に夫を亡くしてからの32年間は、瞬く間の出来事のようにも感じられます。ですが、実際にはその中には激動の時もありました。一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌……と各回忌を迎えるたびに、それぞれの節目を自分自身の成長の課題として捉え、まるで人生の関所のように一歩一歩踏みしめてきたのです。 そして、そこには必ず意味があると信じ、起こる出来事すべてに新たな気づきを得ていると思ってきました。それは後からわかることなのですが、出来事の点と点が不思議なほどに線で繋がっていき、人生は巧みにデザインされているのだと実感させられています。人生はまるで緻密なパズルのように、ひとつひとつの経験が絡み合って全体を形成していくのだと感じました。
さまざまな人たちの「言葉」が救ってくれた
人生という旅路には辛く苦い時間も存在しますが、私はそのたびに、誰かの言葉に助けられてきました。表現者である豊からも言葉が持つ力を教わりましたが、豊が旅立った後も、さまざまな言葉が私を救ってくれたのです。だからこそ、私は言葉を尊び、今も一言一言を大切にしながら生きています。言葉は時として人を深く傷つけ、奈落の底に突き落とす刃となる一方で、心を高揚させ、幸せに導いたり、救ってくれる力にもなります。それはまた、戦争や対立を引き起こす引き金ともなり得るし、使い方次第では幾重にも変化します。正に言葉は剣のように、その一振りで運命を変えてしまう力を秘めていると思うのです。 私自身、人が放つ言葉によって心に傷を負ったこともありましたが、しかし、ありがたいことにそれ以上に私の人生に関わる多くの人の言葉が助けにもなったのです。私がFRaUwebで、豊との日々やその後の人生について連載を始めたのも、私の経験は稀有なものであったとしても、私の経験から生まれた言葉が他の方に届き、何かの勇気や力になることもあるかもしれない。そのために、若いうちから様々なことを学び、経験させられてきたのではないのか?と感じたからです。連載を始めてから今日に至るまで、そんな思いで執筆をしています。 振り返ってみれば、豊が旅立ってから、挫折や悲しみ、思い通りにいかない日々など、何度も試されました。ですが、そうした経験こそが私に深い学びを与え、成長へと導いてくれたと思うのです。苦い経験を乗り越えた時、日常のたわいもない出来事が一層輝いて見えるようになり、真の喜びや奥深い感謝が芽生え、その経験が人生のあらゆる側面を甘く感じさせてくれました。この小さな幸せや達成感がより特別に感じられることは、苦しみを経て得た宝物であり、過去のすべての経験が私を形作り、穏やかな今を過ごせている感じです。と、生きていたら59歳になる彼の仏壇に掌を合わせ、笑顔で報告しようと思っています。