なぜ渋野日向子は長期海外挑戦プランの決断に苦悩したのか?
だが、突然の発表にメディアやファンの間では「なぜ?」という戸惑いの声も広がっていた。 今年の国内初戦となった前週の「ダイキンオーキッドレディス」では「ANAインスピレーション」の出場可否について「出たいけど、いろいろあって今は考えています」と言葉を濁していた。さらに「明治安田生命レディス」開幕前日の11日の会見では「今週中に結論を出さないといけないですよね」と発言した。そして翌日のオフィシャルサイトでの突然の出場表明である。決断までに、そうとうの苦悩や葛藤があったことがうかがえる。 なぜ渋野は迷ったのか。 今回はオフィシャルサイトで今後のツアーの参加日程が発表されただけで、マネジメント会社からのリリースの類も出されることはなかった。1月にテレビ東京のアナウンサーとの熱愛が一部で報じられたときに、マスコミ各社の問い合わせに一切応じなかったマネジメント会社は、今回も“だんまり”を決め込んだため、決断への経緯がもうひとつ伝わりにくかった。もしこのままアスリートトラックが適用されなかった場合、「ANAインスピレーション」に出場すれば、自主隔離期間中にあたる「KKT杯バンテリンレディス」には出場できない。渋野が所属するマネジメント会社は、この大会のメインスポンサーとの関係が深い。渋野が「自分はANAに出たい。でも、いろいろあって…」とこぼすほど悩ませた裏には、ある種の“大人の事情”があったのかもしれないのだが…。 最終的には渋野の決断が尊重された。 昨年、渋野は、ディフェンディングチャンピオンとして出場した全英女子オープンの前後から海外ツアーに本格チャレンジ。なかなか思うように結果を出せなかったが、海外ツアーの“締め”となる昨年12月の全米女子オープンでは最終日まで首位をキープして優勝争いを演じた。その「スマイリング・シンデレラ」は全米でも注目を集めた。コースも含めて厳しい海外の環境の中で勝負して結果を残すために、そこに腰を据えておくことの重要性を渋野は、昨年、身をもって感じたのだろう。そして「世界のトップを極めたい」というのは、アスリートの源泉ともいえるチャレンジ魂であり向上心だ。確信に変わりつつある手ごたえがあるからこそ渋野は、悩んだ末に長期の海外挑戦プランを決断したのかもしれない。