燃料利用量2割低減…中部電力が初開発、独自構造「水素バーナー」の性能
中部電力は産業向けの水素バーナーを開発した。自社開発の水素バーナーは初。独自のバーナー構造で、500度Cの予熱空気を用いた場合でも窒素酸化物(NOx)の発生を抑え、燃料の利用量を2割低減できることを確認した。バーナーの部品交換をせず、都市ガスやLPガスの専焼、水素との混焼も可能となる。試験機での定格出力は60キロワット。直接加熱式で、熱処理や乾燥などでの活用を見込む。価格も他社の混焼バーナーと同等に抑え、水素の利用が本格化するとみる2020年代後半の販売を目指す。 開発したバーナーは2段燃焼方式を採用し、1段目では燃料と空気を混合させながら燃やす旋回燃焼をとる。水素は都市ガスと比べ火炎温度が高く、サーマルNOxの発生量が多くなる課題がある。このため燃料と空気の混ざり方を工夫し、火炎を維持させながらも局所的に高温になることを避け、NOxの生成を低減した。 2段目では1段目で燃焼したガスを混合させる。これにより酸素濃度を低くし、火炎の最高温度を低下させる。これら技術の活用で幅広い燃料に対応できるほか、燃料の使用量を低減するのに有効な排熱回収時でも、NOx排出量を規制値以下に抑えられた。 中部電力は22年ごろから同バーナーの開発を本格化させた。足元では社会実装に向け、共同で実証試験に取り組む工業炉メーカーやエンジニアリング会社を探索する。同社技術開発本部の三觜謙次先端技術ソリューショングループ長は「熱エネルギーの供給源としては、化石燃料は依然として多い。電気だけでなく熱分野でも、カーボンニュートラル(温室効果ガス〈GHG〉排出量実質ゼロ)に向けて全方位で開発に取り組む」とする。