「奄美大島に移住」57歳の彼が進める“趣味の終活”。海の宝石「ウミウシ」に魅了、“終活”しようと思った理由
その後はバイク、自動車に熱中。かつて思い描いた通り、ソフトウェア会社のSEとしてコンピューターに関わる仕事にも就いた。 しかし、1990年代初頭にバブルが弾け、勤めていた会社が倒産した。しばらく遊んで暮らそうと思っていたところ、職場の先輩に誘われ、スクーバダイビングを始めた。 「当時は超円高で、国内で潜るより海外で潜ったほうが安かったので、サイパンへ潜りにいっていましたね。現地でライセンスを取り、水中の風景やハゼの撮影を始めました」
ウミウシの魅力に気づいたのは2000年ごろ。オールカラーで300種のウミウシが掲載された『ウミウシガイドブック』(小野篤司 著・TBSブリタニカ)を手に取ったのがきっかけだった。 「それまでウミウシは5種類しか知らなかったので、こんなにいるのかと。種類の多さとフォトジェニックなところに魅了されて、ウミウシ専門になりました」 ■仕事が忙しく趣味に没頭できない日々 長年、数々の趣味を楽しんできた今本さんは、ウミウシ撮影を「趣味の集大成」と表現する。
カメラやパソコンの知識は、「海の宝石」の魅力を最大限に引き出すのに役立った。カメラをウミウシ撮影用にアレンジする際、工作などで鍛えた創意工夫と手先の器用さが発揮された。「ムダのない趣味をしてきたなと自分でも思います」と今本さんは笑う。 撮影スポットは、普段は伊豆半島。夏は沖縄の海だった。しかし、SEの仕事がかなり忙しく、伊豆にもそう頻繁には行けなかったという。 「伊豆にダイビングに行くだけでもガソリン代やタンクレンタル代、施設使用料などでお金がかかりますし、帰りは国道135号の大渋滞に巻き込まれて疲れてしまう。日曜日に行くと翌日仕事になりませんから、土曜日しか行けなかったですね」
奄美大島を初めて訪れたのは2003年3月。夫婦で沖縄へのウミウシ撮影旅行を計画していたが、仕事が忙しくて手配が遅れた。代わりに向かったのが奄美大島だった。 待っていたのは「ウミウシ天国」だった。短期間で初めて出会う種や珍しい種、南方種のウミウシにたくさん出会えた。海はほぼ貸し切りで、伊豆のように大勢のダイビング客もいない。 のどかな島の雰囲気も気に入り、5月と7月にも奄美を再訪。ますます島の魅力に取りつかれ、移住を考えるようになったという。