「奄美大島に移住」57歳の彼が進める“趣味の終活”。海の宝石「ウミウシ」に魅了、“終活”しようと思った理由
「勤めていた会社は激務でしたが、給料は悪くなかった。共働きで子どもがいませんでしたから、当時はある程度の蓄えもありました。だから、仕事を決めないまま移住できたんだと思います。不安がなかったわけではありませんが、仕事が見つからなければまた小田原に戻って関東の会社で働けばいいかなと。行かないで後悔するのは嫌だったんです」 ■引っ越した矢先に痛風、まさかの出会い 2003年11月、奄美移住を決めた今本さん夫婦は車で鹿児島へ向けて出発した。各地のウミウシを撮影しながら移動し、滞在先では晩酌を楽しんだ。鹿児島からはフェリーに乗り、ようやく奄美大島に辿り着く。ところが、引っ越し作業が終わって仕事を探そうとした矢先、足に激痛が走った。痛風だった。
しかし、人生何が幸いするかわからない。今本さんを診察した奄美医療生協が運営する奄美中央病院の院長から職業を聞かれ、SEを辞めて奄美に来たと話したところ、病院のIT化構想を温めていた院長と話が弾み、「(就職の)面談受けてみる?」と言われたのだ。 「その後、面談を受けて就職が決まりました。後になってわかりましたが、島の求人状況は厳しいんです。自分の得意分野を活かせるような仕事は当時少なかったので幸運でした。痛風が起きたのは、後にも先にもこの1回だけです」
今本さんの職場の休みは月2回の土曜日と日曜・祝日。ウミウシを撮影するのはもっぱら休日だ。 ウミウシのシーズンである12~6月には月3、4回、オフシーズンの夏は月1回ほど撮影に出かける。朝9時に自宅を出て、海に潜って90~100分ほど撮影。14時ごろには帰宅して昼食兼夕食をとり、黒糖焼酎のソーダ割りを飲みながら、撮った写真を見てウミウシ撮影の余韻に浸る。 ただ、移住してからずっと同じペースで撮影できたわけではない。気分が乗らず、撮影に行かない時期もあった。ウミウシを通じて生まれた新たな人間関係や、ホームページ内の掲示板での不特定多数の人とのやりとりがストレスになったこともある。