訪米で「日米蜜月」をアピールした岸田首相、実はその裏で進めている真逆の「新しい外交スタイル」とは
■対中国の安全保障としての戦闘機輸出 輸出できる第三国は日本との間で、輸出した武器を侵略に使わないことなどを定めた「防衛装備品・技術移転協定」を結んでいる国で、現在15カ国ある。欧米の主要国のほか、シンガポール、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどASEANの6カ国やインドや豪州と日本の安全保障に大きく関係する国が含まれている。 日本が2022年に制定した「国家安全保障戦略」は、武器の輸出など防衛装備品の海外移転について「特にインド太平洋地域における平和と安定のために、力による一方的な現状変更を抑止して、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略や武力の行使又は武力による威嚇を受けている国への支援等のための重要な政策的な手段となる」と記している。
中国に直接言及はしていないものの、武器輸出が中国に対する抑止力になるとともに、日本と当該国の緊密な関係の構築にも役立つという政策的意図が明記されているのである。 つまり、英国、イタリアと共同開発した戦闘機のASEAN諸国などへの輸出は、日本の安全保障に有益であるという考えだ。 アメリカ以外の国との戦闘機の共同開発や第三国への輸出による安保体制の強化は、今回の首脳会談で掲げた「日米同盟のかつてない高み」とは真逆のアメリカ離れとも見える話である。アメリカにとってもすんなり受け入れられる話ではないはずだが、日本政府関係者によると、事前調整でアメリカ側から強い反発や異論は出なかったという。
つまり、日本はアメリカと向き合うときは日米安保の重要性や自衛隊と米軍の一体性を強調するが、同時進行でアメリカ以外の国々を相手に多様な国家グループを作り、アメリカだけに依存しない安全保障政策も進めているのである。 実はこうした多角的で多様性のある外交は日本だけが推進しているわけではない。国際社会がアメリカ一極支配から多極化、無極化といわれる状況に変化したことを受けて、多くの国が国益を実現するために挑戦している今風の外交のスタイルなのだ。