訪米で「日米蜜月」をアピールした岸田首相、実はその裏で進めている真逆の「新しい外交スタイル」とは
■フルコースではなくアラカルトの外交 この数年、外交の世界では「プルリラテラリズム」とか「アラカルト方式」という言葉が広がっている。 「プルリラテラリズム」という言葉はインドのジャイシャンカル外相が主張しているもので、「特定の課題について利益を共有する国がその場限りのグループを形成する」外交を指す。「アラカルト外交」も同じような意味で、あらかじめ用意されたフルコースではなく、好みに合った料理だけを注文するスタイルを外交に当てはめた考えだ。
こうした外交が広がった背景についてジャイシャンカル外相は著書で、「同盟の規律が弱まり世界が多極化し、独自の思考や計画に着手する国が増えている」「多国間のルールが弱体化し、国際機関の機能が低下している」と分析している。そのうえで「伝統的な同盟を超えた成果ベースの協力が魅力を増していくだろう」と予測している。 日本に引き寄せて考えれば、外交の中核に日米同盟があることに変わりない。 しかし、オバマ大統領が「アメリカは世界の警察官をやめる」と宣言し、続くトランプ大統領が「NATO(北大西洋条約機構)離脱」や「在韓米軍撤退」などをぶち上げて関係国を大混乱に陥らせたことを思い起こせば、「日米関係が良ければ良いほど、中国、韓国、アジア諸国との良好な関係を築ける」(2005年に当時の小泉首相)というような時代はとっくに終わっている。
秋の大統領選でトランプ氏が再選されれば、アメリカの外交政策の予見可能性は再び下がる。そうした状況を、ただ指をくわえて見ているわけにはいかない。日米同盟関係強化をうたう共同声明の内容とは裏腹に、日本政府内にはアメリカに対する不安や不信感が渦巻いており、「日米同盟一本やり」という考え方は姿を消している。 だからこそ逆説的な話ではあるが、アメリカに対しては大統領が誰になろうとも良好な関係を維持できるよう万全の関与を提示するが、同時進行で仮に日米関係が不安定化しても他の国々との関係を構築することで、危機をしのぐことができるようにしておくのだ。