今季1試合登板のみも…藤川球児監督の下で大化け期待の阪神「155キロ右腕」は
岡田監督に見いだされた藤川監督
新監督就任を機に、大ブレークする選手が出るケースがある。 岡田彰布前監督の時は、村上頌樹だった。前年まで一軍で未勝利だったが、プロ3年目の昨年に22試合登板で10勝6敗1ホールド、防御率1.75と大活躍。抜群の制球力で最優秀防御率、新人王、MVPを受賞し、リーグ優勝、38年ぶりの日本一に大きく貢献した。 【選手データ】佐藤蓮 プロフィール・通算成績 そして、岡田前監督が今季限りで勇退。後を継ぐ形で、藤川球児監督が就任した。現役時代、若手で伸び悩んでいた藤川監督の才能を評価し、岡田前監督が抜擢したのは有名な逸話だ。過去に週刊ベースボールのコラムで、こう語っている。 「阪神の剛腕と言えば、やっぱり江夏(江夏豊)さんです。グラウンドでリアルタイムでは見てはいないが、画面を通して、スゴい球や……と感じていた。そんな江夏さん以来、タイガースに剛腕は出現していなかったが、そこに登場したのが藤川球児である。これまで何度も書いてきたけど、二軍監督時代から、球児の球筋、球質に大きな可能性を感じていた。だから04年からセットアッパーに起用したのだが、とにかくストレートを投げてくると分かっていても、バッターはバットに当てることができないんよね」 「甲子園の一塁ベンチから見ているとよく分かった。グラウンドより低い位置のベンチから見ると、球児のストレートはホームベースの手前で、ホップする(ように見えた)のだ。球速としては160キロ出ていない。しかし数字以上の体感をバッターは持っていたはず。もしバットに当たれば、何が起きるか分からない。何も起こさせないためには、バットに当てさせないことなんやけど、球児はそれができた」
ファームで好成績
きっかけをつかめば、大きく飛躍する――。藤川監督は「火の玉ストレート」を武器に球界を代表するリリーバーに進化。日米通算245セーブ、164ホールドをマークした。打者の手元でホップするような軌道の直球に、打者のバットが空を切る。大きなロマンを抱かせる投球スタイルだったが、その姿と重なる剛腕がいる。来季プロ5年目を迎える佐藤蓮だ。 最速155キロの直球は重くて速い。だが、一軍のマウンドは遠かった。制球難に苦しみ、四球で走者をためて痛打を浴びた。22年に右肘痛、腰痛などでウエスタン・リーグで9試合登板に終わり、育成契約に。昨季も19試合に登板で防御率6.04とファームで結果を残せなかった。大卒入団でファームに埋もれていれば立場が厳しくなる。背水の陣に追い込まれ、投球フォームの改造に踏み切る。テークバックを小さくしたフォームに変更すると、制球力が格段に上がった。今季はウエスタン・リーグで49試合登板し、2勝0敗3セーブ、防御率2.03。7月20日に支配下復帰すると、9月30日のDeNA戦(甲子園)の7回に一軍初登板を飾り、牧秀悟を153キロの直球で遊ゴロに仕留めるなど三者凡退に抑えた。