「神は死んだ」困ったお客様を撃退する“ニーチェ先生”の最新刊。婚活に挑む原作者を襲った、悲しすぎる現実とは?【書評】
2024年8月に最新刊となる21巻が発売された『ニーチェ先生~コンビニに、さとり世代の新人が舞い降りた~』(ハシモト:漫画、松駒:原作/KADOKAWA)は、原作者・松駒さんのコンビニ勤務での実体験を描いたマンガだ。悟り世代の大物新人・ニーチェ先生の言動を中心に、痛快なやり取りが繰り広げられていく。 【漫画】本編を読む
原作者であり、本作の主人公でもある松駒さんが勤めるコンビニに、新人として現れた仏教学部に通う大学生の仁井(にい)くん。仁井くんは、「お客様は神様だろうが!」と怒鳴る困ったお客を、哲学者・ニーチェの名言「神は死んだ」で撃退する大型新人だった。 本作では、そんなニーチェ先生(=仁井くん)の「悟り」の境地のような思想や、クセの強すぎるコンビニスタッフたちとの日々を楽しめる。 最新刊となる21巻では、松駒さんがマンガのネタのために結婚相談所へ体験に行く話や、世知辛すぎる婚活パーティーに参加するエピソードが展開される。婚活でなにより重視されるのは「経済力」であるという身もふたもない現実を突きつけられつつも、リアルな婚活事情が知れるのはおもしろい。 松駒さんはコンビニ勤務をしつつ、累計260万部を突破する大人気マンガの原作者だ。婚活ではきっと高い人気を集める…と思いきや、参加者と1対1で話す時間で、Bさんという女性にフルシカトされてしまう。 松駒さんは無言の気まずい時間をすごしたあと、「口下手な人もいるよな」と自分を納得させようとしていた。だが、他の男性と輝くような笑顔で積極的に会話するBさんの姿を目撃してしまい…。 「きっと何か気にいらない理由があったのだろう」と察しながらも、心に深い傷を負う松駒さん。その切なすぎる表情に、思わず笑いがこみあげてしまう。 そんな愉快なエピソードがもりだくさんの21巻は、マンガの締め切りに終われる松駒さんのもとへ、『ニーチェ先生~コンビニに、さとり世代の新人が舞い降りた~』テレビドラマ化のオファーが来たところでしめくくられる。ニーチェ先生の世界を、これからもまだまだ楽しめそうだ。 文=ネゴト / 押入れの人