「水素焙煎コーヒー」が新局面 研究・試作段階から実用化のレベルへ 来春に本格発売 UCC上島珈琲
UCC上島珈琲が取り組む「水素焙煎コーヒー」が研究・試作の段階から実用化の段階に進んでいることが明らかになった。 10月9日、スペシャルティコーヒーの展示会「SCAJ2024」の出展ブースで取材に応じたUCC上島珈琲の藤原朋宏SCM本部生産部安全・設備課係長は「今までは水素や水素焙煎についての研究や試作を行っていたが、今は水素焙煎でどのような製品を作るか、どのようにカテゴリーを確立していくかという、商業ベースに向かうフェーズに入った。将来的には(小売店で)水素焙煎コーヒーの棚を作りたい」と説明する。 水素焙煎コーヒーとは、コーヒー豆を焙煎する際に、水素を熱源として使用したコーヒー。天然ガスの代わりに水素を熱源とすることで、焙煎時にCO2を排出しない。 同社が使用する水素は、官民・他業界の垣根を越えた連携とNEDOの採択を受けて開発されたP2Gシステムを使う。再生エネルギーをベースとした電気で水の電気分解によってつくられるため実質的にCO2フリーの熱源となる。 環境負荷低減に加えて、水素を熱源とする焙煎はコーヒーの味わいのバリエーションにも貢献する可能性も浮上。 水素を熱源とすることで、ガスと比べて、弱火から強火までの熱のかけ方でより広い幅が出せる。水素にしかできない焙煎プロファイルにより、豆の産地によって異なる個性をより引き出すことが可能であることが判明した。 例えば、華やかな風味を特長とするエチオピアのイルガチェフェ地方産のコーヒーは、水素焙煎によってよりフルーティでフローラルな味わいを引き出す。 藤原係長は「水素焙煎の可能性を模索し、水素の認知も広がってきて、ようやく“最初の一杯”にたどり着いた」と力を込める。 同社は水素焙煎の研究を進め、2023年5月、協力企業のヒートエナジーテック社と共同で水素焙煎に関する発明について共同で特許を出願。 その後、トヨタモビリティ東京との協働や関連イベントでのコーヒー提供などを行い、量産化の計画にまでたどり着いた。 水素焙煎を本格的に始動させながら、カーボンニュートラルの達成に向け、今後も焙煎時の熱源の可能性を探る。「水素以外にも、電気やアンモニア、コーヒー残滓を活用したバイオコークスなど、別の熱源の利用も視野に入れている」と意欲をのぞかせる。