実質賃金は26ヶ月連続のマイナス。業界ごとの差はどれほど?大企業と中小企業の賃上げ格差も拡大へ
【産業別】現金給与総額と消費者物価指数
2023年5月から2024年5月までの賃金の動きは下図の通りです。 2024年5月時点での数値を見ると、現金給与総額が消費者物価指数(3.3%)を上回っているのは、「建設業」「運輸業,郵便業」「情報通信業」「その他のサービス業」です。 過去1年間で見ると、全業種の賃金が消費者物価指数を下回ったタイミングもあります。 実質賃金は26ヶ月連続のマイナスという状況ですが、プラスに転換するには企業の賃上げが重要な要素となるでしょう。 続いて、2024年における賃上げの動向を見ていきましょう。
2024年における賃上げの動向
日本労働組合総連合会は、2024年の春闘方針を下記のように定めています。 経済社会のステージ転換を着実に進めるべく、すべての働く人の生活を持続的に向上させるマクロの観点と各産業の「底上げ」「底支え」「格差是正」の取り組み強化を促す観点から、前年を上回る賃上げをめざす。賃上げ分3%以上、定昇相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め5%以上の賃上げを目安とする。 引用:日本労働組合総連合会「2024 春季生活闘争方針」 こういった背景もあり、賃上げ率が5%を超える企業も見受けられます。 ●賃上げ実績と初任給の実態アンケート結果 帝国データバンクが実施した「2024年度賃上げ実績と初任給の実態アンケート」によると、賃上げ率が5%を超える企業の割合は26.5%となっています。 一方で、賃上げ率5%未満の割合は67.7%となっており、「据え置き」または「賃下げ」となった企業の割合は17.2%もあります。 8割以上の企業で賃上げが行われているものの、企業規模や業種間で大きな差が見られるのが現状です。
【初任給】大企業と中小企業の賃上げ格差が拡大
新卒社員の採用がある企業における「初任給」の金額は下図の通りです。 「20~24万円」が最も多く、その割合は57.4%となっていますが、「20万円未満」の企業が35.2%に上ります。 大企業を中心に初任給のアップが大々的に報道されましたが、中小企業ではそのような金額は出せず、格差の拡大を感じている企業も多いようです。 実際にアンケートに回答した「企業の声」を見てみましょう。 ●賃上げへの企業の声 アンケートの内容を見ると、「大企業との賃上げ格差が拡大し、人材の確保が一段と困難になっている」との声もあります。 賃上げしないと人手を確保できないのが現状であり、そもそも賃上げする余裕がない企業では人手の確保が一段と困難になっているようです。