2000万円超の新型ロータス エレトレRは、“秘伝の味”が確実に引き継がれていた(日本初試乗記)
ブラックホールに吸い込まれているかのような加速感
地下駐車場から地上へ上がるスロープはかなり狭いけれど、サイズを持て余すことはなかった。というのも上級仕様の“R”には、後輪操舵が標準装備されるからだ。 都心の一般道に出てびっくりしたのが、望外の乗り心地のよさ。しかも超高級SUVのふんわり系、ぼよよん系の乗り心地のよさではなく、路面からの情報をしっかり伝えながら、いらない振動やショックをシャットアウトする、すっきり辛口系の乗り心地のよさだ。おそらくエアサスペンションや電子制御式のダンピングシステムがきっちりとチューニングされ、効果的に機能しているのだろう。 エレトレRは、フロントに最高出力225kW、リアに450kWのモーターを積み、システム全体の最高出力は675kW(918ps)というモンスター。けれども、少なくとも市街地を走る限りは、洗練されたフィーリングの電動高級車で、車内にはイギリスの名門、KEFのサウンドシステムがいい音を鳴らしている。 高速道路の合流で、がばちょとアクセルペダルを踏んでみるけれど、当然ながら日本の法と道路環境では、2秒と全開加速を続けることはできない。なんせ0~100km/hの加速タイムは2.95秒なので、味わえるのは氷山の一角だ。ただしその滑らかで強大、ブラックホールに吸い込まれているかのような加速感からは、いかに水面下の氷山が巨大なのかが伝わってくる。 直線よりも、「うぇーい!」と楽しくなるのは、コーナーだ。 ステアリングホイールからの確かな手応え、そして操舵した瞬間にノーズがごく自然にインを向く回頭性の高さ、スパッという切れ味の鋭さは、「エミーラ」や「エリーゼ」といったロータスのミドシップスポーツカーを思わせる。 あるいは、エミーラやエリーゼに乗っている人は、電動SUVのエレトレには興味がないかもしれない。でも淡麗辛口の乗り心地といい、ノーズの向きの変え方といい、ロータス秘伝の味は確実に引き継がれている。 不思議なのは、ツインモーターのフルタイム4駆なのに、なぜロータスの味が出せるのか、という点だ。これも乗り心地と同様に、モーターと最新テクノロジーの組み合わせで実現したのだろう。具体的には、4輪へのトルク配分とブレーキ調整でコーナリング能力を高める、トルクベクタリングを最適にチューニングすることがキモになったはずだ。