2000万円超の新型ロータス エレトレRは、“秘伝の味”が確実に引き継がれていた(日本初試乗記)
完成度の“超”高いADAS
意外なことことは、まだまだ続く。 ロータスのエンブレムをつけているクセに、といっては失礼だけど、ADAS(先進運転支援装置)系の出来が抜群だ。 高速道路でステアリングホイールを握る左手の親指のワンアクションで、操舵も支援するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)が作動する。コーナーであまりにナチュラルに曲がるからステアリングホイールから手を少し放そうとすると、両手でしっかり握って操作してくださいとシステムに怒られた。ただし、カメラやセンサーなど、システムとしてはハンズオフ走行が可能なレベル3の要件を満たしているというから、いずれロータスのエンブレムがついたクルマでハンズオフ走行をする日が来るかもしれない。 中国資本で生産は中国・武漢、商品企画とデザインはイギリス、開発拠点はドイツと、適材適所のグローバルな体制で開発することで、ロータスの魂を継承することと、最先端の電動高級車両の要件を満たすことが両立できたのだろう。 なんというか、頑固一徹のスポーツカー職人と、マーケティングにも長けた巨大IT企業のコラボといった趣の、非常に興味深いモデルだった。こんなクルマはほかにないし、これからどんな展開になるのか、将来が楽しみでもある。 ロータスの創始者であるコーリン・チャップマンは、グランドエフェクトカーやアクティブサスペンションなどのアイデアで旋風を巻き起こした、天才エンジニアとして知られる。もし存命だったら、嬉々として自動運転や電動化に取り組んでいたはずだ。 同時に、チャップマンはF1マシンに初めて広告を取り入れた天才マーケッターでもある。草葉の陰から、このクルマや高級電動車両ブランドに移行する一連の動きを、おもしろがって見ているのではないだろうか。
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)