なぜ大坂なおみは大逆転で全豪OPベスト8進出を果たせたのか?「1年前の私なら絶対に勝てなかった」
「イライラした瞬間もあったけど、考えすぎていた部分を捨てたら落ち着いて、集中してプレーできるようになった。試合前にコーチからもらった情報と自分の感覚が、ようやくマッチするようになった」 心のなかに巣食っていた迷いを捨てるきっかけを、第3セットの第5ゲームの途中で自ら手繰り寄せている。ムグルサに鮮やかなバックハンドウィナーを決められ、15-40とダブルでブレークポイントを握られた直後に、今大会で初めてラケットをコートに叩きつけた。 このゲームを、ダブルフォールトを犯した末に落とした。大事なラケットを叩きつけた行為を「ちょっとストレスがたまって」と反省した大坂だが、胸中に募らせていた怒りをすべて吐き出すとともに、サーブでもショットでも強いボールを打つ、という自らの原点に回帰した。 スタッツを見ると76%に達していた第2セットまでのファーストサーブ成功率が、第3セットでは41%へ大きく数字を下げている。4度のダブルフォールトのうち、3つは第3セットで犯したものだ。しかし、その分だけ強くラケットを振ることに神経を集中させていた。 例えるなら、肉を切らせて骨を断つ、となるだろうか。実際に第3セットでは、大坂にとって今大会で最速となる196kmのファーストサーブも計測された。試合後にムグルサが残した言葉を聞けば、正確性よりもスピードと威力を重視する戦略に切り替えられたサーブの効果が伝わってくる。 「サーブが決まったときには、彼女(大坂)に主導権を握られるような感じになった。マッチポイントを落としたときは、たった1秒で流れが変わったようでちょっと落胆した」 アンフォーストエラー(凡ミス)を比べれば28回のムグルサに対して大坂は36回を数えている。最終的なファーストサーブ成功率でも79%に対して61%と下回った。だが、一方でエースの本数では11本に対して8本、ウィナーでは40本に対して24本と大坂が上回った。