管理職 の3分の1が恐怖心に駆り立てられたリーダーシップを無意識に採用、年間5兆円の損失に
恐怖は活力剤にもなり得るが
「恐怖はいい活力剤となり得る。人々はエネルギーをもらい、自分を守るためにエネルギーを特定の方向に向けられるようになる」と、カウンセリングサービスを手がけるスライブワークス(Thriveworks)の公認セラピスト、カーラ・ケイズ氏は指摘する。 だが、ほとんどの管理職は、自分が恐怖に基づくリーダーシップを採用していることに気づいていない。そこでこの調査では、恐怖に基づく感情を抱く頻度を回答者に尋ねた。 恐怖に基づく感情には、回避、攻撃、疑い、非難などがある。この調査では、恐怖心に基づくリーダーシップを展開している管理職は、不安を感じたり、マイクロマネジメント(部下を必要以上に細かく管理・指導する管理手法)やインポスター症候群(自己を過小評価する心理傾向)に陥ったり、怒りを覚えたり、フィードバックを受けることや意見を述べることをためらったり、独りよがりになったりする経験が、「常に」または「たびたび」あると答えていた。 「恐怖心に関するこうした問題は、無意識に生じている」と、今回の調査を委託したマーゴット・ファラチ氏はいう。同氏は、金融サービスやテック企業など、プレッシャーの高い業界で20年にわたってリーダーシップマネジメントに携わってきた経験を持つ人物だ。「もし彼らに恐れを抱いているかと尋ねれば、みなノーというだろう」。
恐怖心を抱えるリーダーたち
この調査ではまた、恐怖心を抱えるリーダーの40%近くが、ストレスを職場で積極的に活用できると強く信じていることも判明した。 恐怖心は警戒心を駆り立てるため、場合によっては良い動機付けとなる。たとえば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの際には、恐怖心が迅速なワクチン接種を後押しした。ただし、これは長期的に持続可能なやり方ではないと、ファラチ氏は話す。「リーダーシップに関していつも恐れを抱いていると、自分自身にも部下にもダメージを与え、最終的には自分の成果にダメージを与えることになる」と、同氏は付け加えた。 この1年ほど、従業員の生産性に対してかつてないほど注目が集まっている。さまざまな企業が、パンデミック後の事業損失、不安定な経済、オフィス勤務の時間に対する従業員の反発などに対処しているからだ。企業のリーダーの中には、オフィスの再開を生産性低下への処方箋と捉え、積極的に推進している人もいるが、根本的な問題は他にも潜んでおり、放置すれば全体的な生産性を損なわれることにもなると、今回の調査リポートは強調している。 この調査では、恐怖心を抱えるリーダーの約90%が、従業員の生産性の低下が見られると認めていたほか、60%の幹部が、直属の部下が仕事に不満を抱いているようだと答えていた。