2024年食品業界重大ニュース 食の安全保障、重要性鮮明に 持続性確保へ基盤固めた1年
2024年の食品業界は能登半島地震をはじめとする自然災害の多発、長期化するウクライナ問題など地政学リスクの増大を背景に、「令和のコメ騒動」で主食のひっ迫に直面するなど、食の安全保障の重要性を色濃く印象付けた一年だった。4月にはドライバーの残業規制開始に伴う物流の「2024年問題」が本番に突入し、人手不足は全産業の深刻な課題に浮上。インフレ環境も背景に所得改善の兆しもみられたが、食品値上げ含む物価上昇の伸びに相殺され、消費の冷え込みも顕在化した。一方でコロナ収束後の人流回復に伴うインバウンドが過去最高を更新し、年末には日本の伝統的な酒造りがユネスコ無形文化遺産に登録が決まるなど、明るい話題も登場。政府が食料安全保障の強化や物流危機の回避へ法改正含む対策を進め、食品産業の持続性確保へ基盤を固めた一年にもなった。本紙ではこの一年を振り返り、重大ニュースを次の通り決定した。
能登半島地震、スーパーマーケット(SM)が被災地で奮闘
24年は、元日に発生した石川県能登半島を震源とする大地震で緊迫感が漂う幕開けとなった。能登地域は穏やかで風光明媚な土地である半面、幹線道路も鉄道路線も少ない過疎地。今回の大地震では、その脆弱な物流網が物資供給などの妨げとなってしまった。同時に、北陸各県の食品関連企業に大きな被害を及ぼした。 ただ、食品スーパー各社が大変な状況の中で被災地のために奮闘した。特にアルビスは、断水が続き生活水の確保に困る地域住民のために毎日、本社から水道水を詰めたポリタンクを店舗に運んだ。大阪屋ショップは、道路の損傷や断水で提供できる商品に限りはあったが、店内の損傷が激しい店舗では店頭で切りの良い金額で販売。各社が見事な初動対応で被災地に安心感を与え、「地域のライフライン」としての存在感を高めた。
令和のコメ騒動、調達難続き高値圏に
端境期の8月、都市部を中心に売場からコメが消え、令和のコメ騒動が始まった。新米の本格的な出回りに伴い状態は改善されたが、価格が大幅に上昇している。そもそも前23年産米は、猛暑と渇水で不作と歩留まりの悪化に見舞われ、業界でそれ以前から、コメ不足が懸念されていたが、8月8日に出された南海トラフ巨大地震注意の呼び掛けを機に、消費者が買いに走ったことで拍車を掛けた。 これが産地の集荷競争激化を誘発し、卸業者は「必要量を調達できない」と悲鳴。現在も玉確保にやっきだ。結果、高値につながり、スーパーで例年、特売で5kg1500円前後だったのが、今や3000円前後が底値。多くの食品が値上がりする中、唯一価格安定していたコメは、今や一番値上がりし、今後の需要減が懸念される。