2024年食品業界重大ニュース 食の安全保障、重要性鮮明に 持続性確保へ基盤固めた1年
農業基本法を改正、業界の役割・課題明記
気候変動、世界の地政学リスク、インフレ、国内の少子高齢化など食を取り巻く状況が大きく変わる中、農林水産省は食料政策の基本理念である「食料・農業・農村基本法」を四半世紀ぶりに改正し、6月施行した。柱として「国民一人一人の食料安全保障」を明記。農業生産の拡大と両輪で輸出を促進して供給能力を維持し、食料安保の確立を目指す。 食品産業の役割や課題では「環境と調和のとれた食料システムの確立」を掲げ、その重要な担い手に位置付けた。また「食品産業の健全な発展」のため(1)環境への負荷の低減および資源の有効利用の確保その他の食料の持続的な供給につながる事業活動の促進(2)円滑な事業承継の促進(3)先端的な技術を活用した食品産業およびその関連産業に関する新たな事業の創出の促進(4)海外事業の展開の促進–を図るとした。
2024年問題、運べないリスク増大
今年4月、過酷な労働環境が指摘されていたドライバーに時間外労働規制が適用された。これに伴う輸送能力の低下と運べないリスクの増大、いわゆる「物流の2024年問題」は、全産業共通の大きな関心事になった。 官民総力の対策によって今のところ大きな混乱は生じていない。日本加工食品卸協会、SBM会議、SM物流研究会をけん引役に、荷待ち・荷役削減やリードタイムの緩和など、持続性確保の取組みが業界全体に浸透した。 しかし、ドライバーの高齢化などで物流需給は今後さらに悪化する。30年には輸送能力が最大で34.1%不足するという試算もある。さらなる効率確保に向け、今年5月には改正物流効率化法が公布。来春の一次施行では、すべての荷主・物流事業者に荷待ち削減などの努力義務が適用される。
訪日客、19年超え過去最高
訪日外国人(インバウンド)の年間客数が過去最高を記録した。24年1~11月までの累計で3337万9900人となり、年間客数で過去最高だった19年の3188万人を上回った。高まるインバウンド需要を追い風に、外食市場が盛り上がりを見せたほか、菓子・ジャパニーズウイスキーなどの需要が高まった。 24年の外食市場はコロナ流行前の19年や23年と比べて、インバウンド需要が大きく伸びた。特に、ファストフード業態やコーヒーショップ・喫茶店・コーヒー専門店、専門料理店でインバウンドの消費が大きく拡大した。 菓子はグミをはじめ、ハードキャンデーやチョコレートといったカテゴリーなどでも需要が伸びている。国内外で評価が高まるジャパニーズウイスキーもバー業態や小売店での販売が拡大した。