なぜ浦和レッズは新型コロナ禍ルール適用の“没収試合扱い”懲罰に異議を唱えスポーツ仲裁裁判所に提訴したのか?
新型コロナウイルス禍でJクラブに科された懲罰事案を巡り、Jリーグとの間に生じたトラブルの解決が国際的な仲裁機関に委ねられる事態に発展した。 J1の浦和レッズは19日、エントリー資格のない選手を出場させてJリーグから受けた懲罰処分の一部取り消しを求めて、スイス・ローザンヌに本部を置く一審制の国際的な仲裁機関、スポーツ仲裁裁判所(CAS)へ提訴したと発表した。 浦和は6月20日の湘南ベルマーレとの明治安田生命J1リーグ第18節で、リーグ戦への登録に必要な新型コロナウイルスの指定公式検査を受けていないGK鈴木彩艶を起用。2-3で敗れた一戦が没収試合扱いで0-3とされるなどの懲罰が科されていた。 浦和の提訴が発表された前日の18日には福島ユナイテッドが2-0で勝利した5月16日のヴァンラーレ八戸との明治安田生命J3リーグ第8節が、浦和と同じ理由で0-3に変更されている。前例のなかった没収試合が、今シーズンに入って相次いでいるのはなぜなのか。
浦和は19日午後に更新した公式ウェブサイト内で、CASへ提訴したと発表した。 問題となった湘南戦で、直前まで東京五輪へ向けたU-24日本代表の活動に招集されていた鈴木は、Jリーグがクラブ単位で2週間に一度の頻度で定期的に実施している、新型コロナウイルスの指定公式検査を受検できなかった。 ただ、代表活動中に日本サッカー協会(JFA)が実施し、陰性が確認されていたPCR検査の結果をもって代替する措置が可能だった。実際に湘南戦に出場するにはJリーグのエントリー資格認定委員会に申請する事前手続きが必要だったが、浦和はこれを失念した。ウェブサイト内では「クラブの認識不足が原因」と謝罪している。 結果として鈴木はリーグ戦へのエントリー資格がないまま先発フル出場。事態を重く見たJリーグの規律委員会は7月1日付で、始末書の提出を含めたけん責、当該試合を没収試合扱いでスコアを0-3とする2つの懲罰処分を科した。鈴木本人には瑕疵がないために処分はなく、湘南を含めた試合の個人記録もすべて有効とされた。 浦和はけん責処分については全面的に受け入れたが、もうひとつの懲罰については内容が不当だと表明した。というのも、規律委員会が『JFA懲罰規定[別紙1]競技及び競技会における懲罰基準3-3』内で、処分が科されるケースとして記された「出場資格の無い選手の公式試合への不正出場(未遂を含む)」に該当すると判断したからだ。 鈴木は公式戦への出場資格を保持する選手であり、あくまでもエントリー手続き上の不備だと浦和は主張。懲罰規定の正しい運用から逸脱しているとしてJFA不服申立委員会に異議を申し立てたが、却下されたためにCASへの提訴に踏み切った。