なぜ神戸は3点差大逆転劇を実現できたのか?
サッカーの試合で大逆転劇はなかなか起こらない。1993年のスタートから29年目を迎えたJ1リーグの歴史を振り返れば、4点差以上を逆転して勝利をもぎ取ったチームはまだ現れていない。 3点差を逆転した試合も過去に8度だけ。そのうち後半だけで4ゴール以上を奪ったのは2度、不利となる敵地で成就させたのは1度しかない。20日に札幌ドームで行われた北海道コンサドーレ札幌とヴィッセル神戸の明治安田生命J1リーグ第6節は、稀有なケースをすべて満たす90分間となった。 「ハーフタイムにもう一度、自分たちがやるべきことを整理するように指示を出した。後半は途中から入った選手たちがしっかりと役割を果たした。よく逆転してくれたと思っています」 長居第2陸上競技場で後半15分までにセレッソ大阪に奪われた3点のビハインドを、同24分以降にあげた4連続ゴールではね返した1995年9月6日のジェフ市原以来、26年ぶりに敵地で後半だけで4点をもぎ取り、3点差を逆転したチームになった神戸の三浦淳寛監督が勝因をあげた。 札幌のFWアンデルソン・ロペスに、前半終了間際に立て続けに2つのPKを決められて迎えたハーフタイム。FW藤本憲明に代えて今シーズン初出場のMF中坂勇哉を送り出し、日本代表に選出された古橋亨梧を左サイドハーフから最前線にあげた采配が大逆転劇への狼煙となった。 体勢が整う前の後半1分に、ロペスにハットトリックを達成されて0-3とされた。三浦監督も「あの失点は余計だった」と振り返ったが、追い詰められた選手たちは逆に思考回路が整理された。 古橋が自慢のスピードを駆使して、攻守両面で札幌の守備陣へ何度もプレッシャーをかけた。中盤では中坂が札幌守備網の合間に何度も顔を出し、パスの配球役を担いながら味方の能力を引き出した。 川崎フロンターレ戦から中2日の過密日程を考慮し、DFトーマス・フェルマーレンやFWドウグラス、MF郷家友太、MF井上潮音らを遠征メンバーからも外した指揮官は、今シーズン初めてベンチ入りさせた神戸のアカデミー出身の23歳、中坂のパフォーマンスを称賛した。 「シーズンのスタートからすごく調子がよかったので、どこかのタイミングで使いたいと考えていた。今日は中坂が入ってから、確実に流れを変えてくれたと思っています」 まずは後半8分。敵陣左サイドの深い位置でボールを受けた中坂が、冷静に状況を見極めながらマイナス方向へパスを折り返した。これをゲームキャプテンのMF山口蛍が「いい流れで僕のところに来たので、あとは決めるだけでした」と技ありのトラップから、ゴール左隅に突き刺した。