なぜ堀口恭司は必殺の「カーフキック」を使い朝倉海にリベンジを果たすことができたのか?
堀口は“参謀”のマイク・ブラウン・トレーナーと対朝倉戦略を練りに練ってきた。 オンラインで米国フロリダにいる堀口をインタビューした際に約束の時間に遅れた理由は「ブラウンとの戦術の確認」だった。ブラウン・トレーナーは「あらゆるパターンを用意している」と語っていたが、その秘策のひとつがカーフキックと呼ばれる、相手のふくはらぎの近辺を狙って動きを止めるローキックだった。 「カーフキックは狙っていました。もっとグラップリングも入れていたが、向き合ったときにそれは出すべきじゃないなと。寝技をやろうと思ったんですけど、海君が、けっこう、そっち(カーフキック) に気を取られていたのでカーフキックでいけるねと思ってカーフキックをメインにやっていました」 リング上で察知した感性を使い堀口は、数ある秘策のひとつのカーフキックを選択した。 ファーストコンタクトは右のカーフキック。いきなりバランスを崩させると、朝倉海のパンチ攻撃をガードで受けて、また右のカーフ。3発目の右のカーフキックでは朝倉はマットに手をついた。もう朝倉のふくらはぎは真っ赤に変色してしまっていた。 朝倉兄弟にとって、それは予期せぬ攻撃だった。 「蹴ってくるのは想定していましたけど、外せると思っていました。僕も出入りが速い方で、いままであまりローキックを僕に対して蹴ってくる選手がいなかったので、そこでちょっとやられちゃいました。盲点ですね。踏み込みが速かったのと、けっこう思い切り振ってきたので、それに対抗できなかった。2発目ぐらいからけっこう効いちゃっていました。僕の方からテイクダウンを取りにいこうという考えだったんですけど、すぐに足が機能しなくなって、動けなかった」 朝倉海が、こう言えば、作戦面を任されていた朝倉未来も、正直にこう吐露した。 「カーフキックをあんなにやってくる、というのは作戦のなかになかった。そこのカットというか、読みができれば流れもだいぶ変わったのかなと」 堀口が繰り出したカーフキックは手術した右足である。 テーピングもサポーターもせずに「アホですから(笑)。壊れていいと思っているんでね、それに状態もいい」と堀口は右足で蹴った。そのことが意表をついたのかもしれなかった。 しかも、ベルトを守るプレッシャーからか、堀口の動きが予想に反したものだったからか、兄が驚くほど朝倉海の動きに硬さが見られたという。 「何か身体が硬かったですね。どうしてあんなに硬かったのかがちょっと謎。堀口選手がそうさせたのか…力みがすごかったので、いつもの力を出し切れていない感じがあった」 体硬直状態で土台である足を蹴られれば、なおさらダメージが増す。