朝倉兄弟のRIZIN大晦日決戦“KO競演宣言”に根拠はあるのか?
総合格闘技イベント「RIZIN.26」(大晦日・さいたまスーパーアリーナ)に参戦する朝倉未来(28)、海(27、共にトライフォース赤坂)の兄弟が18日、オンラインで練習を公開した。RIZINフェザー級王座の獲得に失敗した兄の未来は弥益ドミネーター聡志(30、teamSOS)との再起戦。弟の海は元2冠王者の堀口恭司(30、ATT)との「RIZIN史上最大のリベンジマッチ」を受けて立つが、2人は“KO競演”を宣言した。2人が揃ってKO決着をぶちあげた根拠とインパクトのある勝ち方にこだわる理由とは?
兄弟スパーでレベルアップ
公開練習は兄弟によるスパーリングだった。パンチやキックをガチで当てることのないごく軽いマススパー。海の説明によると、これまでは、兄弟で合同練習をすることもスパーをする機会も少なかったというが、「今回は、ほとんど毎日一緒にやった」という。 「兄貴の分析(力を生かす)じゃないが、スパーリングを増やすことで強くなれるんじゃないか、とその時間を増やした」 これまでは出稽古中心だったが、練習拠点のトライフォース赤坂に逆に選手が集まり始めたことも兄弟スパーを増やせた理由のひとつ。その影響で「練習量も増えた」という。 午前中に兄と合同練習。昼からは曜日を分けて、元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者の内山高志氏のジムでのボクシングトレ、サーキットトレ、パーソナルトレーナーとのフィジカルトレを行ってきた。万全の2部練である。 だから堀口とのリベンジ戦への「不安要素は何もない」とハッキリと明言した。 「前回は完全に向こうが有利な状況でオレが負けると言われた。それを見返してやろうと挑んだ。でも今回は周りの評価は五分五分。王者としての実力を見せて倒したい。(兄にも)強くなったと言ってもらっているし、自信を持って戦える」
昨年8月の堀口戦は、海がアンダードッグだった。堀口と再戦する予定だった大晦日のRIZINバンタム級王座決定戦ではマネル・ケイプ(アンゴラ)に2回TKOで敗れたが、そのケイプがUFCに電撃移籍したことで返上されたベルトを扇久保博正と争い王座を奪取。9月には昇侍を相手に初防衛に成功している。いずれも完璧なKO決着による連勝で評価は急上昇。一方、右膝の大手術を終えた堀口には1年4か月ものブランクと練習拠点のある米国からの帰国で、新型コロナの感染予防対策として2週間の自主隔離を余儀なくされているなどの不安要素がある。 「KOを狙っていますが、勝つことが大事なんで。勝ちにいく中でチャンスがあれば倒しにいく。(手術をした右膝を)狙って蹴ることはしないが、躊躇はしない」 再戦にはどちらにもメリットとデメリットがある。 海は勝者の優位点をこう語る。 「前回の試合で、カウンターを当てているんで、そこの警戒心は強くなる。心理面の変化が必ずある。入り辛くなると思う」 堀口の武器はステップインの鋭さ。海は、そこに影響が出るはずだと見ているのだ。 朝倉兄弟には、相手の癖を盗むなどの分析力を戦略に落とし込むというクレバーさがある。68秒で決着をつけた堀口戦では、頭を左に倒して右のパンチを打ち込んでくる癖を見抜き、その位置を狙ってドンピシャでカウンターの右を打ち込んだ。 そして、試合後には、「まだほんの一部しか出していない。細かいところで作戦を立ててきた。引き出しをすべて出さずに温存できたのでよかった」とも語っていた。 再戦に備えて堀口のRIZINでの10試合の映像を再び見直して新たな弱点を見つけた。 「(見つけた弱点が)増えましたね。最近、分析して気づいたこともある」 結果的に秒殺で仕留めたが、最初の堀口戦は、判定勝利を念頭におき「ポイントを稼ぎながらいいのが当たればいく」という作戦を組んでいた。今回も、もう一度、その作戦をベースに実行するのだろう。海が予測するように、堀口は無造作に仕掛けてくることはしないだろうから、2試合続けての一撃のカウンターKOは難しいのかもしれない。だが、打撃、組み、寝技とトータルの勝負になっても、必勝戦略はある。 「ディフェンスにも自信があるし、攻めていくこともできる。何も劣っているとは思っていない。蹴りも、以前からに加えて今年に入って見せている通りでパンチを混ぜながらバンバンつけると思う。組み?そこも強い。別に負けないかなという印象」 リング外での活動でファイターとしての感性も磨いた。 先日はNHKの俳句番組にゲスト出演。紹介されている俳句に「減量や練習など格闘技の心境に近い共通点を感じた」という。番組出演している対馬康子氏から「覚悟なり 兄とシリウス 撃つ路上」との一句をもらい感激した。 食生活では1週間前までは「野性的に強くなれる気がする」と馬肉や羊肉などの”ジビエ料理”を食する。心技体の準備は万全だ。