「料理とは、自分の人生そのもの」ーー主婦目線の「おいしい」をとことん信じる、栗原はるみの流儀
料理家として一番大切にしているのは、分量、数字を見極めること。「本当は料理ってそんなものじゃない、気楽につくって楽しむものなんだけどね」と栗原は笑う。 「基本的に私は、初めて料理をする人に向けてレシピをつくってるんです。上手な人は、コントロールが利きますから。でも苦手な人は、数字を見ないとできない。そこをいつも忘れないようにしています。たまには珍しい食材を取り入れるのもいいかなと思うけれど、あまりしないかな。私はレストランのシェフじゃないから。あくまでも、家庭料理ですから」
インスタのコメントには全部目を通してます
栗原家定番の家庭料理をラインアップした『ごちそうさまが、ききたくて。』は、続編と合わせて200万部以上売れた。この著書でブレークした栗原は、料理家として大きく羽ばたき、手がけたレシピ本は累計3100万部以上の発行部数を誇る。
「最初に人気が出たのが、さばそぼろでしょ、それからにんじんとツナのサラダ。なるほど、自分の強みは、特別なことじゃないんだなと思ったんです。おしゃれしすぎちゃいけないんだなって。もちろん、おしゃれが嫌いなわけじゃないんだけど(笑)。やりすぎないこと、材料が多すぎないこと。これが大事。家庭にいつもある材料でできること、そこはすごく気にしてます」 栗原の活躍以降、世には数多くの料理家が現れた。SNS全盛の今、料理系YouTuberなる新ジャンルも登場し、料理家への門戸は広がりを見せている。こんな現況を、栗原はどう眺めているのか。気になる料理家はいるのか、また、誰かのレシピを参考にすることはあるのだろうか。
「ないですね。ううん、見たくないわけじゃないの。時間がない、本当に。自分の試作で、精いっぱい。YouTubeも、ほとんど見たことがなくて。はるみさんもやってみたら?なんて言われるんだけど、私は違うかな……どう思う、誰も見ないんじゃない(笑)? インスタは、なんとか続けてるんだけど、ね」 4年前から、ほぼ毎朝インスタグラムの更新を続けている。3月1日現在のフォロワーは64.7万人。栗原からの発信を熱心に待つファンに向けてのアカウントだ。 「コメントには全部目を通してますよ。たまに1000件を超えることもあるんですけど、ありがたいですね。皆さんからのメッセージに勇気づけられています。これを見ていると、世の中って捨てたもんじゃないな、って思うの。いい人が多いなあって」 写真は、庭、植物、キッチン、料理がほとんど。まれに旅先でのショットを公開することもあるが、基本的には伝える範囲を決めているという。 そして料理に関しては、惜しげもなくレシピをオープンにする。なぜ出し惜しまないのか、と尋ねると、笑って答えた。