なんと「あおり運転させない」クルマ…!ココロが「丸ハダカにされてしまう」自動運転が目指す衝撃の未来
公道での実走実験も必要…でも、お巡りさんに止められることも
ただし、より日常に近いデータを取るためには、やはり公道に出ての実走実験も欠かせないらしい。 「被験者に実際に運転してもらって、たとえば産総研のあるつくばから常磐道を通って、都内まで往復するなどの実験をやっています。車内にたくさん機材を積んでいるし、ドライバーは脳波を計測する電極のついた白いキャップを被っているしで、事情を知らない人にはかなり怪しく見えるみたいです(図「公道での実走実験の記録写真」)」 「お巡りさんに『大丈夫ですか?』と車を停められたこともありました(笑)。なにか重症の患者が運転していると思われたかもしれません。実験中はトイレに行くときもキャップを脱げないので、パーキングでも周囲の人にギョッとされます」
「居眠り運転」の防止から「怒り」の抑制まで
木村さんがとくに力を入れているのは、目の動きや心拍数の計測だ。目の動きは、ビデオカメラで撮影する。心拍数は、ステアリングに仕込んだ心電計で手指の脈拍を測る。ほかに、非接触で計測できる機械の開発も進んでいるという。 「脳波の計測器は、市販の自動車に搭載することはできませんよね。でも、ビデオカメラや心電計ならば、それが可能です。たとえば、ドライバーの緊張感や注意力などをモニターして、危険が予測されると警告を発するなどの新しい事故防止機能を考えることができるかもしれません」 なるほど、そういわれると「感情の見える化」は、自動車の安全性向上に役立ちそうだ。ほかにも居眠り運転防止機能や、近年、大きな問題になっている「あおり運転」を抑制する機能も、渋滞中のイライラやマナーの悪いクルマへの怒りを制御することで可能になるかもしれない。 「これからは自動運転がますます普及していきます。自動運転車に新しい機能を実装させることで、事故やトラブルを未然に防げるかもしれません」 「いまはドライバーの心理状態に対応して車のほうを制御するしかありませんが、たとえば怒っている人に、そのときの自分の表情を写真に撮って見せると、怒りが抑制されるかもしれません。運転している人にそんなものを見せるのは危険かもしれませんが、自動運転ならそれも可能でしょう。なにか問題が発生したときには強制的に路肩に停めるなどしてもいいかもしれない。そういう工夫はいろいろ考えられると思います」 だが、自動車メーカーが知りたいのは、怒りやイライラといったネガティブな感情だけではないらしい。むしろ、クルマの作り手・売り手ならではの、知りたい「ドライバーの感情」というものがあるという。