ファミコンは「日本発のイノベーション」ドラクエで人気爆発、世界に広がったゲーム市場 #昭和98年
「ゲームセンターCX」の名物コーナー「有野の挑戦」は静かな人気を誇り、リアルでのイベントにも発展。2013年の日本武道館には7000人、2018年の幕張メッセには1万人を集めるほどになった。簡素なグラフィックとシンプルなルールの古いゲームに有野さんが挑戦するのを観戦する。ある意味地味なイベントだが、ファンは国内外に広がっている。 「何かの仕事で鹿児島に行ったとき、市場でおばちゃんに『ゲームの番組を見てるわよ。あんた下手ね。頑張ってよ』って言われて。アメリカでも課長の格好でロケしてたら、車に乗ったおじさんから『KACHO!(有野課長)見てるぞ!』と声をかけられたことがあるし、ロシアでは歪な形の『星のカービィ』のタトゥーを入れた人から声をかけられた。アメリカのゲームセンターで課長と名刺交換したい人集まれってやったら、厚紙を切って自分の住所を書いて手作り名刺の外国の人もおって、世界で存在が知られているのは感じますね」
有野さんが中高生の頃は家でファミコンに触れる時間は多くなかった。そのため、番組で扱うゲームは初めてプレイするものも多い。だからこそなかなかクリアできず、その苦戦する様子が視聴者に受けているんじゃないかと分析している。 「自分はゲームは下手だけど、大好きなんですよ。理想は格好よくクリアしたいけど、何度もミスをする。でも諦めないでクリアする姿勢が良いみたいで、それを応援したいって人達がいるようなんですね。ファミコンはあのシンプルさがいいんじゃないですかね。コントローラーは十字キーとABボタンだけ。派手でCGがすごいゲームもいいけど、番組が続いているのは、あのゆるい感じが好きな人が世界に結構いるってことだと思います」
「ファミコン」ことファミリーコンピュータは1983年7月15日、任天堂から発売された。カセットを入れ替えるだけでいろんな種類のゲームを楽しめる手軽さが受け、爆発的な一大ブームを巻き起こし、2003年の生産終了まで日本で累計1935万台、世界で同6191万台を売り上げた。大ヒットを支えたのは『スーパーマリオブラザーズ』(1985年)、『ドラゴンクエスト』(1986年)といった人気ソフトの登場だ。こうして生まれた巨大市場は周辺産業にも商圏を広げていった。中古カセット市場、専門雑誌や攻略本などの出版メディア、漫画やキャラクタービジネス、テレビ番組や映画制作……。角川アスキー総合研究所の調査によれば、世界のゲーム市場(2021年)は約22兆円と推計されるが、その発展の起点はファミコンだったといえるだろう。