大谷資料館の幻想的な地下空間で涼む!いざ冒険映画の世界へ
栃木県宇都宮市
宇都宮市の大谷(おおや)資料館を初訪問したのは10年前のこと。当時は真夏でも分厚い上着の貸し出しがあり(現在は休止中)、そんなに涼しいの?と驚いたものだ。その“涼しさ”を求めて久しぶりにやって来た。 東北新幹線宇都宮駅からバスに乗り、大谷観音前バス停で下車。大谷資料館の最寄りバス停よりも手前で下車したのは、昨年11月に開設された「宇都宮市大谷観光周遊拠点施設 大谷コネクト」を訪ねるためだ。施設は1929年に竣工した国の登録有形文化財の旧大谷公会堂とビジターセンターから成る。 「大谷町は江戸中期から続く大谷石の産地です。旧大谷公会堂は旧城山村の公会堂として建てられ、約2000本の大谷石が使われています。その石材の約90%を再利用して、現在地に移築、復元しました」と施設長の長瀬敦さんは語る。 建物正面には幾何学模様を刻んだ4本の付け柱が施され、設計者・更田(ふけた)時蔵のセンスの良さがうかがえた。 バス通りを歩き大谷公園へ。園内にそびえる平和観音は56年開眼の石仏で高さ27メートルもある。「大谷の奇岩群」の一つの御止山(おとめやま)を望む大谷景観公園に寄り、旧ホテル盤石荘の客室の一部を改装したそば倶楽部稲荷山でこだわりのそばを味わったら、いよいよ大谷資料館を訪問だ。
真夏でも寒いほどの地下空間
大谷資料館の駐車場から坂道を上る。途中、冷風に顔をなでられた。周囲を見回すと岩穴があり、冷風が吹き出しているようだ。この先の涼しさに期待が高まる。 「地下採掘場跡へは30メートルほど階段を下ります。地下の平均気温は7・8月でも15度前後ですから、涼しいを通り越して寒いくらいです」 そう笑う館長の大久保恭利さんに背中を押されて地下採掘場跡へ。階段を下りると突然、地下神殿のような景色が広がった。何度見ても圧倒され、冒険映画の世界に迷い込んだようで心が躍る。 壁面に注目すると、江戸中期から59年まで続いた手掘り時代のツルハシの跡や、それ以降の機械掘りの跡が見られる。大谷石は1500万年~2000万年前の緑色凝灰岩(ぎょうかいがん)で、軟らかくて加工しやすく火に強い。一方、力任せに掘ると割れてしまうため、六十石(厚さ18センチ×幅30センチ×長さ90センチ)1本を採掘するのに、ツルハシを4000回も振る必要があったそうだ。 地下採掘場が稼働したのは1919年から約70年間で、なんと野球場一つ分の地下空間を作り出している。人間の粘り強さとたくましさには感服する。