治る?治らない? 「嚥下障害」かもしれないと思ったら調べたい昨今の「リハビリ事情」
Q 嚥下障害にはどんな検査がおこなわれますか?
嚥下障害の疑いがあるようなら、どこにどんな問題が起きているのか、誤嚥が生じているかを確かめます。そのために必要なのは、エックス線、内視鏡などによる画像検査です。食物の通過を妨げている病変がみつかった場合は、病変の治療に必要な検査を追加し、対応を考えます。 ● 嚥下造影検査 動画撮影可能なエックス線透視装置を備えた医療機関でおこなわれる検査です。造影剤を含んだ検査食を飲み込み、口からのど、食道を通過していく様子をエックス線で動画撮影し、録画してあとで詳しく分析します。 誤嚥があるか、どこで残留しやすいかなどがよくわかります。舌や咽頭など、嚥下にかかわる器官の動きや形の異常、頸椎の病変の有無を確認することもできます。 準備期から食道期まで、すべての摂食嚥下過程をみることができるので、嚥下障害の程度が重い人が口から食べるための訓練を開始する前には、必ず受けておきたい検査です。被曝量は通常の胃エックス線透視より少ないとされています。 ● 嚥下内視鏡検査 鼻から内視鏡を入れて観察する検査です。細くてやわらかなファイバースコープ(内視鏡)を鼻から挿入し、咽頭や喉頭の様子を観察しながら録画します。 のどの動きぐあいや、唾液や分泌物のたまりぐあいなどが確認できます。実際に食物を食べてもらい、飲み込みの状態などをみることもあります。 食道期の障害までは確かめられませんが、大がかりな検査装置は不要で、自宅や施設への訪問診療でおこなうことも可能です。エックス線を使わないので、被曝のおそれはありません。
Q 嚥下リハビリでは、どのようなことをおこないますか?
「リハビリ」というと、機能を回復させるための訓練(トレーニング)を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、嚥下リハビリは訓練だけで成り立つものではありません。ほかにもさまざまな取り組み方があります。 ● 治療・機能回復訓練 食べづらさの原因になっている障害そのものを治療したり、治療がむずかしい場合には、嚥下機能の維持・回復をはかるための訓練をおこなったりします。 食物の通過を妨げている腫瘍などの病変がないことが確認できていれば、嚥下機能をアップさせるために訓練を重ねることが嚥下障害への対応の重要な柱になります。 訓練には、食べ物を用いない基礎訓練と、実際に食べながら進める摂食訓練があります。嚥下機能改善手術が検討されることもあります。 ● 足りない機能の補完 嚥下機能が完全に回復しないと考えられる場合や、あるいは回復までにかなり時間を要するときは、今の機能のままでも安全に食べられるよう、食事内容の見直し、姿勢などの工夫、栄養不足を補うための方法などを考えていきます。 ● 心理的なサポート 本人や家族に「食べたい/食べさせたい」という意欲がないと、嚥下リハビリ全体がうまく進まなくなります。本人や家族の悩みを聞き、いっしょに考えていけるような受け皿となる人の存在も必要です。専門職がかかわり、適切にアドバイスしていきます。 ● 環境整備 本人が生活する場となる家庭などで、適切な食事を提供するにはどうすればよいかなどを考え、調整していきます。家族、介護者が嚥下障害について学び、調理の工夫などで、機能に合わせた食物を提供できるようにしていきます。 嚥下リハビリにはさまざまなアプローチのしかたがあり、並行しておこなうことで、食べる力が総合的に高まっていきます。それぞれの患者さんの状態に合わせて、口から安全に食べられるようにすることを目指し、多角的な取り組みを続けていくことが大切です。 第3回【「嚥下障害」に効果的! 体力が低下していても実践できる「のどや舌の筋力アップ訓練法」】に続く
藤島 一郎