今さら聞けない「ポピュリズムが台頭する」なぜ、そもそもポピュリズムは「悪」なのか?
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻、収束が見えないガザ情勢、ポピュリズムの台頭、忘れられた危機を生きる難民……テレビや新聞、インターネットのニュースでよく見聞きする、緊迫した世界情勢。 「論点」をちゃんと答えられますか? 「受験世界史に荒巻あり!」といわれる東進世界史科トップオブトップ講師『紛争から読む世界史~あの国の大問題を日本人は知らない』の著者が、キナ臭さが漂う今だからこそ学ぶべき「世界の大問題」から、今回はポピュリズム台頭の背景について解説します。 【この記事の他の画像を見る】
■2000年代に台頭してきたポピュリズム アメリカだけではなく、ヨーロッパでも日本でも民主主義のバックスライディングを危惧する動きが2000年代に入ってから見られるようになりました。それがポピュリズムの台頭です。代表的なポピュリズムを列記していきます。 アメリカ合衆国で2016年の大統領選挙に立候補したトランプはメキシコからの移民を犯罪者呼ばわりするヘイトスピーチ、女性を蔑視した発言、他にも多くの放言を行ない、これを多くのメディアが報じながらも当選します。
ブラジルは2019年から大統領を務めていたボルソナロがポピュリストとして知られています。LGBTQの人々の権利を認める法律を議会が認めても反対し、先住民や黒人、移民についても差別的発言を連発しています。 ヨーロッパのポピュリストとして筆頭に挙げられるのは、「フィデス」という政党を率いるハンガリーのオルバーンでしょう。イタリアで初の女性首相となったジョルジャ・メローニは「イタリアの同胞」という極右政党を率いています。また、ドイツでは反移民・難民を訴える「AfD(ドイツのための選択肢)」が議会第三党にまで成長しています。
■ポピュリズムが初めて「登場」したのは? では、ポピュリズム概念について最低限のことを確認しましょう。 まずポピュリズムの語が世界で初めて登場したのは、19世紀末のアメリカ合衆国でした。アメリカ西部の農民が起こした政治運動でポピュリストを名乗る人々が現れます。彼らの主張は東部エスタブリッシュメントへの批判でした。 当時のアメリカは産業革命の進展で工業化が進んでいましたが、西部で生産される小麦は都市への食糧供給として重要さを増していました。しかし、農産物を都市へ運ぶための鉄道運賃を高く設定され、農民の手取りが少なくなることへの不満が政治運動につながったわけです。