人間六度「『モラハラはモテる』がテーマの話は楽しく書けた」現代社会とSFを融合させて描く手法とは?【インタビュー】
テーマへの眼差しとこれから
――小説という表現の中でSFを選んでいるのはなぜですか? 人間六度:SFを使った方が本質的な部分に触れられるからですね。現実世界を舞台に現実の問題を描くとあまりにもグロいというのがあるので、あくまでフィクションの話という(SFの)レイヤーを作ることで、読者が「これ全然違う世界の話だけど私たちの話じゃん」と気づいて、感じてもらいたい。 ――推し活や婚活といったトピックはSNS上で冷笑的に扱われることが多いなかで、六度さんは冷笑ではなく、社会事象に対してとてもフラットな視点をお持ちの方だなとの印象を持ちました。小説を書く上でどのようなポイントに重きを置いていますか? 人間六度:やっぱり“明日”を見せるみたいなことは使命かなと思っています。だからポジティブな話が多いですね。でも、そのポジティブさをちゃんと出すためには、世界がクソであることをまず前提に置かないといけないよねということで(笑)。ディストピア的な世界で一つの光を見せる、暗闇の中で掴む一筋の光みたいな、「そうじゃないとやってらんねーよな」みたいな感じはあります。自分が生きていくためにも誰かに生きていてもらうためにも結局はそういうことが必要だと思います。あと僕は物事を解決する話が好きなんですよね。大事にしているというよりも、そうしないとうまく書けないというか。 ――今後の作品について、関心があるテーマや構想しているものはありますか? 人間六度:今サイバーパンクのAIモノを書いていまして、これは3月に早川書房さんから発売予定です。“アクシデント”がなければ……。 構想しているものではミステリですね。ポディシェアリングっていう技術が発達した世界で、誰かに盗まれてしまった自分の体を探すというミステリを書きたいですね。そのほかにもAIとガチで浮気するっていう話を書きたい。あとメンヘラの話もいつか必ずやるので。それを僕の最後のメンヘラ文学にしてメンヘラから脱却したいです(笑)。
取材・文=すずきたけし、撮影=金澤正平 人間六度(にんげん・ろくど) 1995年愛知県名古屋市生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。2021年『スター・シェイカー』で第9回ハヤカワSFコンテスト《大賞》、『きみは雪を見ることができない』で第28回電撃小説大賞《メディアワークス文庫賞》を受賞。『BAMBOO GIRL』『永遠のあなたと、死ぬ私の10の掟』『過去を喰らう(I am here)beyond you.』『トンデモワンダーズ(上・下)』など著書多数。
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