人間六度「『モラハラはモテる』がテーマの話は楽しく書けた」現代社会とSFを融合させて描く手法とは?【インタビュー】
急性リンパ性白血病という難病との闘病を経て2021年に第9回ハヤカワSFコンテストと第28回電撃小説大賞と二つの新人賞を受賞しデビューした人間六度氏。このたび集英社から刊行された最新短篇集『推しはまだ生きているか』は、現代社会のトピックをSFという手法で軽やかに映し出す5篇を収録。本書はすべてにおいてテーマへのフラットな著者の眼差しが印象的で、優れたリーダビリティも含めユニークながらも親しみやすい物語ばかり。本記事では収録作と創作への姿勢について著者である人間六度氏に話を聞いた。
――『推しはまだ生きているか』には五つのとてもユニークな短篇作品が収録されていますが、これらの作品を書かれるにあたって先にお題となるテーマが先にあったのですか? 人間六度さん(以下、人間六度):『小説すばる』(2022年4月号)で「千字一話」というショートショートをやりまして、その繋がりで(2022年11月号)「都市を読む」の特集で『サステナート314』を書きました。これはノリでパッと書いたところがありまして、当時はサステナビリティに関心があってそれをテーマに書いてみたいというのと、「百合」もやりたい、っていうのもあって(笑)。百合と循環のテーマは親和性が高いと感じていて自分なりにやってみようと思いました。『サステナート314』はストンって書けたんですけど、そのほかの短篇は都市SFからすこし広めにとって、実験社会をテーマに書き進めていった感じですね。 ――収録された作品は「推し」「婚活」「結果主義」など、現実のトピックが面白くSFとして落とし込まれていて、現代との地続きある物語だと感じました。六度さんはSF小説の着想をどこから得られているのでしょうか? 人間六度:発想法としてはめちゃくちゃ遠いもの同士をくっつけて、くっつけたことに対して整合性があって筋が通っていれば面白いものになるといった、フワっとしたメソッドみたいなものがあります。身近なテーマと遠いものを繋いでいくというのが、自分の中でやりたかったことだと思います。
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