「偶然でもいい。神経芽腫、小児がんのことを知ってほしい」娘の闘病記をSNSで発信し続ける父の思い
三重県の4歳の女の子が診断されたのは、小児がんのひとつである「神経芽腫」。治療で病院を自由に出入りできない中、病室から見たのは、ボランティア団体によるサプライズ花火でした。次回は、家族そろって外で見る約束をしていました。女の子の父親が毎日のようにSNSで投稿している小児がんの現状や闘病生活。SNSで広く伝え続ける理由、そして、今も病気と闘う子どもたちのために始めた、新たな活動とは―― 【動画】「娘の小児がんを伝えたい」SNSで発信する両親の決意 SNS投稿を始める約2カ月前、4歳の女の子は、国内で年間約100人が発症するという小児がん「神経芽腫」と診断されました。 去年、病室から画面越しに見た打ち上げ花火。 今年は家族3人、外で見る約束をしていました。治らなかった、小児がん。 「笑舞はもう治らないけど、この病気自体が治る病気になることは、なんとか見せてあげたい」 両親は、娘の闘病を通し、小児がんの現状を伝えることを決めました。 今、病気と闘っている子どもたちのために、できることとは―― 三重県四日市市の向井笑舞ちゃん。 家族が異変を感じたのは、保育園の運動会を控えた3歳のときでした。 「最初は元気がなくなっておなかが痛い、足が痛いと言い出して熱が出た」(笑舞ちゃんの母・向井安由美さん) 「足が痛いって言っていて、たぶん運動会で走るのが嫌なんだろうなと思っていたことが、一番後悔しています」(笑舞ちゃんの父・向井潤さん) 4歳の誕生日を祝った1週間後、医師から告げられた病名は、神経の細胞にできるがん「神経芽腫」。 笑舞ちゃんのがんは、腎臓の上にある副腎で発生、骨髄や足などに転移していて、5年後の生存率が半分以下の「高リスク群」とされました。
「とにかく知ってほしい」
周りに同じ病気の子がいない中、父親の潤さんが情報収集として頼ったのは、SNS。次第に娘のことも投稿するようになりました。 「SNSでいつも笑って楽しそうに、闘病生活をしている投稿があって」(父・潤さん) ―Xの投稿 去年1月 「輸血中 献血を頂いている方や関わって頂いている方達のおかげでこの子の『いのち』に未来が生まれています」 ―Xの投稿 4月 「ミスドに元々行きたいと言っていて行けなくなったので、逆に全種類買ってきたらお店にいるみたいに本人が選べると思い買ってきた」 治療の影響で、外を自由に行き来できないことなど、小児がんの現状を伝え続けました。 笑舞ちゃんが受けた治療は、がんの摘出手術、抗がん剤投与、細胞の移植などです。 さらに、「治験」という限られた子どもしか受けられない試験的な治療も受けましたが、完治させる方法はありませんでした。 「とにかく知ってほしい。認知度が高まれば、国とか県とか自治体レベルで動いて、薬が早く手に入ったり、治験の枠が増えたり、海外に行かなくても国内で済むかもしれない。知識として持っていれば、大事な子どもを守れるし、そこは広めていく」(父・潤さん) 笑舞ちゃんは1年半、懸命に病気と闘いましたが、今年4月、5歳で亡くなりました。 「本当に悔しい。『なんでうちやねん』って思います。神経芽腫が標準治療で治るよというのを見ないと、僕は生きられない、何をしたくて生きているのか」(父・潤さん)