存続の危機のローカル線、路線廃止か「上下分離」か
ローカル線は、地域住民の生活の足や観光客の移動手段として使われてきました。人口減少が進み車社会が定着した現在は、利用者が減って路線の赤字が続き、バスなど代替交通に転換する動きが各地で起きています。地域の公共交通をどう維持するのか、皆さんはどう考えますか。
[A論]維持して沿線振興…「上下分離」経営負担減
新潟県魚沼市から福島県会津若松市までの総延長距離135・2キロを結ぶ、JR只見線。2011年7月の新潟・福島豪雨で橋が流失するなどして不通となりましたが、22年10月に全線で運転を再開しました。沿線住民の交通手段となっているほか、車窓からの山岳風景が、鉄道ファンに愛されています。
鉄路の利点は、交通渋滞や天候に左右されず、時間通りに運行される点です。
会津若松市の病院への診察や友人宅への訪問のため、月2~3回利用する福島県只見町の男性(86)は約3年前に自動車の運転免許を返納、「只見線は雨風に左右されず安全だ。地元のシンボルとして愛着もある」と力強く語ります。只見町交流推進課の目黒康弘課長は「只見線は貴重な観光資源でもある。線路の維持は、地域活性化に必要だ」と強調します。
国土交通省によると、22年度には全国の鉄道事業者95社中、9割にあたる85社が赤字に陥り、利用者の減少で採算が悪化するローカル線の維持に苦慮しています。全国知事会は「ある線区が廃止された場合、残された線区の利用者がさらに減ることで負のスパイラルに突入する」と路線維持を要望。沿線自治体の一部は、鉄道事業者と誘客イベントや旅行商品の開発を一緒に行っていますが、赤字を解消するほど成果を上げるのは難しいのが現状です。
そんな中、自治体が施設を保有・管理し、列車運行を鉄道事業者が担うなどし、経営負担を減らす「上下分離方式」を導入する動きが、相次いでいます。
只見線もその一つです。復旧費約85億円と赤字運営が足かせとなり、再開は難航しましたが、鉄路復旧に熱心な地元に対し、JR東日本が上下分離方式を提案しました。只見線の年間運営費のうち約2億1000万円は県と沿線17市町村が負担、うち只見町が1900万円を支出しています。福島県は、会津川口―只見間の22年10月からの1年間の利用客数について約6億1000万円の経済波及効果があったと推計します。