存続の危機のローカル線、路線廃止か「上下分離」か
国土交通省によると、1987年の国鉄民営化後、JR各社の廃止路線は北海道や東北、中国などの計19路線に及びます。災害をきっかけに廃線となるケースも目立ちます。岩手、宮城両県の沿岸にある大船渡、気仙沼両線の一部は東日本大震災後に不通となり、専用道や一般道をバスが走るBRT(バス高速輸送システム)に変わりました。
2015年の高波被害で運休、21年に廃線となったJR北海道の日高線鵡川―様似間。鉄路を維持するため、JR北が沿線7町に毎年13億4000万円の財政支援を求めたことなどから、バス転換で合意しました。沿線の様似町担当者は「財政支援の捻出は難しく、施設の復旧にも時間がかかる。バス転換は妥当だった」と振り返りました。
青山学院大の福井義高教授(会計学)は「大量輸送が前提の鉄道は、人口減が続く地方での役割を終えた。鉄道会社は撤退時に代替交通の定期券を安くし、ガソリンスタンドを運営するなど、交通を維持するための条件を示すことも必要だ」と指摘します。
「協議会」国が議長役
国は鉄道の設備更新、インバウンド対策などサービス向上への支援のほか、赤字路線を巡り自治体と鉄道事業者が議論する協議会を設置するなどし、地域交通の確保に力を入れています。
南海トラフ地震や首都直下地震などの大規模災害に備え、橋やトンネルなどの鉄道施設の長寿化を図る工事費用の一部を補助。新幹線の整備に伴う並行在来線についても沿線自治体が出資する際、施設更新などの経費も支援しています。
また、インバウンド需要の拡大で経営改善を図るため、車内案内の多言語化やICカードの導入なども援助しています。
昨年10月には、鉄道事業者と沿線自治体の話し合いの場を国が組織する「再構築協議会」を設置できるようにしました。
協議会は自治体か鉄道事業者の要請に基づいて設置、国が議長役を務めます。鉄道存続や廃止という前提は置かず、観光列車の運行で鉄道の利便性を高めたり、バス転換の効果を検証したりする実証事業を行いながら議論し、地域の実情に合った方針をまとめます。 JR西日本は、芸備線備中神代(岡山県新見市)―備後庄原(広島県庄原市)間について協議会の設置を要請、今年3月に全国初の協議会が開かれました。
国土交通省の担当者は「国が第三者的な立場で協議会を運営するので、議論の停滞を防げる。会議を開くメリットを自治体にも力強く訴えていきたい」と話しています。(東京地方部 長谷裕太、松江支局 佐藤祐理)