存続の危機のローカル線、路線廃止か「上下分離」か
滋賀県東部を走る近江鉄道は今年4月から上下分離方式で運行、列車運行のみ負担するため、今年度の鉄道事業は1993年度以来の黒字となる見込みです。2020年7月の九州豪雨後、一部区間の運休が続くJR肥薩線も上下分離方式での運行で基本合意に至りました。
公共交通に詳しい江戸川大の大塚良治教授(経営学)は「様々な移動手段の確保は、災害対策の面でも重要だ。鉄道事業者や行政は、運行を続ける知恵を絞ってほしい」と指摘しています。
[B論]バスでも代替可能…利便保ち コスト軽く
JR西日本は2018年、広島県三次(みよし)市と島根県江津(ごうつ)市の108・1キロを結んでいた三江線を経営改善のために廃止しました。広島、島根両県と沿線6市町は協議会で代替交通を話し合い、廃線と同時にバスなど14路線を開通、現在は10路線が運行します。
代替交通は民間事業者と一部市町で運行、国や両県も補助します。主要区間の運賃は当初、三江線の1・2~2・1倍に設定されました。各自治体は、鉄路維持に比べ、運行コストは小さいと判断したようです。
JR西によると、15年度の三江線の赤字額は約9億円でしたが、島根県によると、代替交通の赤字額は20年10月からの1年間で計約2億200万円にまで減少しました。バスの利点は、比較的自由に停留所を設定できる点です。勤務先のスーパーに代替バスで通勤する島根県美郷町の女性(65)は「三江線の最寄り駅まで徒歩15分だったが、今はバス停まで1分。バスを降りると店は目の前だ」と「駅近」を実感しています。
島根県邑南町で予約制の乗用車を運行するNPO法人「はすみ振興会」の初谷慎吾さん(63)も「希望する場所で乗り降りでき、高齢者は重宝している。地域住民が運転するので見守りにもなる」と話します。
三江線の跡地では、邑南町のNPO法人「江の川鐵道(てつどう)」がトロッコを走らせるイベントに取り組んでいます。日高弘之理事長(83)は「鉄道遺構を人が呼べる観光スポットにしたい」と狙いを言います。