薄幸、怪演、コント… 役者・木村多江のストロングポイント
取材でも好感 木村のムードメーカーぶり
筆者が以前、映画「望郷」(菊地健雄監督)で主演の貫地谷しほりと貫地谷の母親役を演じた木村を同時取材した時のこと、貫地谷が前の取材が押したため先に木村だけが取材場所に到着したことがあった。木村、木村のマネージャー、そして筆者と編集者がしばらくそこで待機することになったわけだが、その数分の間、木村は終始あの穏やかな微笑を浮かべて、恐縮しきりのこちらを気遣い、いろいろな言葉を投げかけて場の雰囲気を実になごやかに保ってくれたことを覚えている。そしてインタビューが始まると、貫地谷から「多江さんは誰に対してもウエルカムな姿勢。だからみんなが変な緊張もせず楽になれる。そういう空気を作ってくださるのでホントにありがたかったです。多江さんも暗い役だったと思うんですけど、現場ではすごくムードメーカーになってくれて楽しかったです」との話を聞いたのだったが、まさにその証言通りの人であることがわかった。 「バラエティー番組では自分で『こう見えて結構雑なんです』と明かしたりマネージャーが『せっかち』と証言したり、おっちょこちょいなエピソードも披露したりしていますが、すべてひっくるめての木村さんなんでしょう。人間性豊かでいろんな要素を持ち合わせているからこそ、さまざまな役を演じることができるんだと思います」(民放放送局50代男性プロデューサー)
“あな番”劇場版はドラマ版のパラレルワールド
前述のドラマ「あなたの番です」ではハンドミキサーを手に鬼気迫る表情で菜奈(原田知世)に襲いかかる“ミキサー主婦”早苗役が大きな反響を呼んだ木村だが、12月公開の劇場版「あなたの番です」(佐久間紀佳監督)にも出演が決定している。脚本はドラマ同様、福原充則氏が手がける。木村は12日の自身のインスタグラムで「脚本家の仕事はすごい。『あなたの番です』の脚本も面白くて先が読みたくてたまらなかったな」と振り返り、劇場版への期待を高めている。劇場版はドラマの続編ではなく、パラレルワールドが舞台。ドラマ初回で描かれた菜奈と翔太(田中圭)の引っ越しの日を起点に新たな物語が始まるという。木村はやはりハンドミキサーを手に取るのか、それともまったく異なる早苗になるのだろうか。 あな番に限らずだが、役者として絶好調の木村多江からは目が離せそうにない。 (写真と文:志和浩司)