習近平政権の絶望…中国で若者が大量に失業し「すでにデフレ状態」での経済政策が「根本的に間違っている」といえる理由
なぜ若者が大量に失業しているのか
若者の失業率が高騰する直接な原因は3年間のコロナ禍をきっかけに数百万社の中小零細企業が倒産したからである。世界のどこの国でも同じだが、中小企業はもっとも雇用創出に貢献するセクターである。中国では、中小企業の99%は民営企業であり、民営企業は国有銀行から無担保で運転資金の融資を受けることができないだけでなく、政府の財政支援の対象外でもある。景気が減速局面に入ると、中小企業の多くはすぐさま資金難に陥ってしまいがちである。コロナ禍が中国社会に落とした影は予想以上に深刻である。 中国では、若者にとって大学に進学することは人生のジャンプ台に乗るようなものである。エリートの若者の間で外国企業や大手民営企業は花形職業だった。しかし、コロナ禍をきっかけに、外国企業はサプライチェーンの一部を海外へ分散している。大手民営企業もリストラを余儀なくされている。とくに若者の失業率が高騰するなかで、現役の会社の給料も下方修正されている。こうしたなかで一般家計は生活防衛に走り、消費を控え消費性向が低下傾向にある。 一方、不動産バブルが崩壊し、不動産不況が長期化する様相を呈している。中国では、持ち家比率が高く、そのうえ、投資目的で二戸目、三戸目のマンションやアパートを保有する割合が高い。不動産バブルが崩壊したため、不動産投資を行っている家庭は逆資産効果により、消費を控えざるを得なくなった。 不動産バブル崩壊の影響は予想外の展開として地方政府に飛び火している。不動産バブルが膨らむプロセスにおいて地方政府は土地使用権(定期借地権)を払い下げることで巨額の財源を手に入れた。それをもとに地方政府は傘下の「融資平台」(日本の第三セクターに相当する)を利用して巨額の債務を借り入れた。しかも、その債務にはオフバランスの隠れ債務も相当の割合になっていると推察される。 習近平政権にとっての難題はフローのGDP伸び率を押し上げなければいけないが、同時にストックの地方債務も解消しなければならない。地方債務を解消しなければ、国有銀行への利払いが滞ると、国有銀行にとって不良債権になってしまう。場合によって金融危機に発展する心配がある。したがって、共産党中央経済工作会議で決定された地方債務問題を解決するための財政政策は間違ったものではないと思われる。ただし、それはあくまでもストックの債務問題を解決するためのもので、フローのGDP伸び率を押し上げることができない。