箱根駅伝“3代目山の神”青学大・神野大地のいま…“プロ転向”は失敗だった?「もうダメかもな、と何度も」本人が明かす胸の内「それでも心の奥に…」
年始に行われた101回目の箱根駅伝は、青学大の8度目となる総合優勝で幕を閉じた。すっかり常勝軍団となった同校だが、その初優勝は3代目「山の神」としてスターになった神野大地の存在なくして語れない。卒業後は実業団を約2年で退社しプロランナーに転向するも、目標に掲げたマラソンでの五輪出場は叶わず、未だ目立った記録は残せていない。プロ転向を「失敗」と見る向きもあるが、本人に後悔の様子はなく、新たな挑戦に向かおうとしている。《NumberWebインタビュー全3回の1回目/つづきを読む》 【写真】「フォーム激似やん…」かつて法大エースだった父と現在の青学大エース・黒田朝日の激走を写真で比較&「ぜ、全然変わってない?」8年前の“3代目・山の神”誕生の瞬間と31歳になった神野大地の現在と今大会の青学大も現地写真で見る 東京は丸の内の一等地にそびえ立つJPタワー。地上38階、200mの高さを誇るオフィスビルが、現在の神野大地への取材場所だった。 訪問した企業の名は、M&Aベストパートナーズ(MABP)。企業の合併や買収(M&A)の仲介を担う会社だ。グレーのカーペットにブラックの高級そうな椅子。巨額を動かすビジネスとあって、オフィス各所には高級感が漂っていた。 神野は2023年末から、このMABP陸上部の監督兼任選手として、同部のニューイヤー駅伝出場を目標に活動している。
あの青学大「山の神」の現在は?
さかのぼること6年半。神野は所属していたコニカミノルタを退社してプロランナーになった。しかし、青山学院大学時代に「山の神」として知られたほどのインパクトは残せなかった。 主戦場にしたマラソンのタイムも伸び悩み、最高記録は2時間9分34秒。記録だけを並べれば、もっと速い選手は山ほどいる。 だが、結果をもって神野の挑戦を「失敗だった」と結論づけられるほど、人生は単純な物語ではない。 本人や関係者への取材で6年半の歩みを振り返りながら、神野の現在に迫る。
箱根駅伝優勝…あの「高揚感」をもう一度
青山学院、山の神、そしてプロランナー。神野大地の経歴を並べると、エリート街道を歩んできたように聞こえるかもしれない。 しかし、陸上を始めた頃の神野は、決して突出したランナーではなかった。中学卒業時のベストタイムは、1500mが5分4秒、3000mが10分27秒で「女子より遅かった」(神野)という。 それでも神野は、自身の長距離への適性を感じていた。 「小さい頃にやっていた野球は才能8割、努力2割の世界。身長が低くパワーのない僕はどうしても体格差で圧倒されてしまい、なかなか勝てません。でも、長距離は努力したら上にいける可能性がある。才能2割、努力8割の世界ですから」 努力を重ねて高校時代に自己記録を伸ばし、青山学院からの推薦を勝ち取った。大学では2年から頭角を現し、学生ランナーのトップ層に食い込んだ。 3年の箱根駅伝では5区の山登りで驚異的な区間記録を樹立し、一気に学生スターランナーとして有名になった。 20%以上の視聴率を誇る箱根駅伝のスター選手の元には、大量のファンレターが届く。その高揚感は格別で、一度味わうと逃れにくい。そのため、大学を卒業してからも高揚感を求めて、大きな目標を掲げる選手が多い。 神野もその一人だった。箱根以上に興奮できそうな数少ない舞台の一つが、世界中から注目が集まる五輪のマラソンだった。しかも、次の開催地は東京。目指さない理由はなかった。 世界トップレベルとの差は認識しつつも、それまで逆境を切り開いてきたという自信もあった。そうした過去の実績が、神野に五輪でのメダル獲得という可能性を抱かせていた。
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