能登地震でもやっぱり出た、根拠のない「人工地震」 デマはなぜ広がる? かつてはオウム真理教も「阪神大震災は地震兵器の攻撃」
人工地震は、約100年前の関東大震災でも世間の口に上った。その背景に何があるのか。評論家の真鍋厚氏は、「列強の存在に対する恐怖感」を指摘する。 「再びささやかれるようになったのは阪神大震災からで、東日本大震災で一般に広がった」 真鍋氏はそこに、グローバリズムの拡大と経済の衰退に不安を抱いた日本社会が、陰謀論に反応した姿を見る。 さらに、こんな点にも注目している。「あらゆる現象の背後に行為の主体を見つけようとする人間の心理」。地震などの自然災害が起きると、以前は「神」の関与が考えられたが、やがてそれは「闇の勢力」に置き換わっていった。 「科学技術が進化していけば、地震や噴火、洪水などの自然現象も操作できるのではないかとの考えが出てくる。それは、科学の発展が陰謀論を強化するという、あまりに皮肉な結果を意味している」 ▽「『よそ者』への敵視」 ところで、震災時に飛び交う根拠のない情報は人工地震だけではない。
被災地に「外国人窃盗団」が出没したとのデマも、能登半島地震発生直後から拡散した。差別や偏見を助長する偽情報は、関東大震災で自警団などが朝鮮人を虐殺する悲劇を招いている。不安と恐怖が「よそ者」への敵視へとつながってきた。 ジャーナリストの藤原亮司氏はこんな経験をしている。2011年3月、東日本大震災による津波の被害を取材するため東北地方の漁港を歩いていた。陸に乗り上げた船などを撮影していると、5~6人の男性たちが何かを叫びながら走ってくる。その手にはもりやバットが握られていた。 男性たちに取り囲まれ、地面に押し付けられるように座らされた。 「おまえは中国人だろう」「何を盗みに来た」と、殺気立った雰囲気で詰問してくる。免許証などを見せ、取材目的で来ていることを説明すると、ようやく解放された。 「なぜこんなことをしているのか」 藤原氏がそう尋ねると、男性の1人は「中国人が被災地でいろんな物を盗んでいると聞いた」