能登地震でもやっぱり出た、根拠のない「人工地震」 デマはなぜ広がる? かつてはオウム真理教も「阪神大震災は地震兵器の攻撃」
藤原氏は、うわさによって人々が暴力的な行動に出かねない現実を目の当たりにし、衝撃を受けた。「災害による非日常な状況では偽情報を簡単に信じ、自分の正しさを疑わなくなる」 交流サイト(SNS)の発達により、その危うさは増していると感じる。 東北学院大教授の郭基煥氏が2016年、仙台市内で770人を対象に行った調査では、東日本大震災の際に外国人が被災地で犯罪をしているとのうわさを「聞いた」のが51・6%で、うち86・2%が「信じた」と回答。「外国人」は「中国系」が6割を超えていた。 「災害下でのストレスが、コミュニケーションの相手と考えていない外国人への憎悪につながる」。そうした感情は、外交関係やメディアの報道からの影響も受ける。「偏見に基づくデマが何を生み出してきたか、歴史の教訓を社会が共有すべきだ」 今年2月、藤原氏はかつて男性たちに取り囲まれた地域を訪れた。道路は整備され、震災の痕跡は目につかない。当時の外国人犯罪の話を尋ねても「知らない」との答えが返ってくる。50歳代の男性は、うつむきながらつぶやいた。
「あの時は(集落を)守るのに必死だった」 ▽「フェイクに向き合う」 こうしたデマについて、「日本ファクトチェックセンター」の編集長、古田大輔氏は「情報を拡散させるのは、故意犯、確信犯、愉快犯の3パターンに分類される」と話す。詳しく聞いた。 ―どういった特徴が。 「故意犯は、情報が偽物だと知りながらも拡散する。投稿の閲覧数を上げてカネを稼いだり、政治的に有利な状況をつくり出したりしようとする。確信犯はその情報が正しいと信じており、人工地震やワクチン陰謀論など、知られていない『真実』を広めようとする。愉快犯は、ただ注目を集めようとするのが目的だ。災害時は、それぞれが大量に現れる」 ―巨大な力によって人工地震が隠されていると考える人もいる。 「そこから見えるのは、世の中で主流とされている情報への疑念だ。政府の言うことは裏があり、メディアもコントロールされているという不信感がある。反ワクチンの人が『地震も何かのたくらみでは』と思うように、陰謀の考えを横に展開していくことはよくある」