”黄色のおじさん”の市長選 720万円失うも「三度目の正直」目指した、76歳の14日間
■黄色のおじさんの正体
過去最多に並ぶ新人7人が立った名古屋市長選では、前市長の河村たかしさんの後継者と自民・立憲などの与野党相乗りで推薦する前参議院議員の戦いに注目が集まった。そのなかで黄色の服装でひっそりと戦い続けた候補者がいる。今回を含めて名古屋市長選に出馬すること3回、没収された供託金は計720万円。負けても挑み続ける”黄色のおじさん”の市長選を追った。 黄色の帽子に黄色のフリース、シャツや靴下、リュックサックも黄色。ズボンと靴以外は黄色づくしの太田敏光さん(76)は2017年の名古屋市長選で初出馬し、今回で3回目の立候補だ。 選挙に勝つために必要とされる「地盤(後援会などのバックアップ)」、「看板(知名度)」、「かばん(資金)」のいずれもなし。どの政党からの推薦も支援もない無所属の元会社員。過去2回の市長選での得票率は3.00%(2017年、2万99票)、1.79%(2021年、1万3804票)と当選争いに絡むことなく惨敗した。それでも今回の市長選に立つことを決めた。 「夢はやっぱり『当選』だよ」。目を輝かせて語る太田さん、実は名古屋市議会関係者や名古屋市政の担当記者たちの間では”黄色のおじさん”として知られている存在だ。名古屋市議会が開かれるたびに本会議や委員会に至るまで黄色の服装で傍聴する”市政ウォッチャー”で、議員の発言などをつぶさにチェックし、ブログで発信している。さらに市に対しても公園の整備を進めるようたびたび要望しているという。 太田さんはどうして黄色の服装をまとうのか、なぜ市政ウォッチャーとなり立候補を続けるのか、本人に聞いてみた。
Q.いつも黄色の服装ですが…
「黄色は元気がでる色。議会に行くときも黄色の服なら目立つから、俺1人でもいっぱいいるように見える。議会には緊張感がないとだめ。自分で言うのも何だけど、(俺がいることで)緊張感が違うと思うよ」 黄色の服で存在感を示し議会の引き締めを図っているという。帽子はリサイクルショップで100円で購入し、ズボンや靴はワークマンでそろえた。自宅のクローゼットは礼服を除いてすべて黄色というこだわりぶりだ。 「帽子があると転んでも頭を保護してくれるし、演説中、変なやつに頭を殴られても大丈夫なように被っている。夏は暑いからメッシュの黄色の帽子を使っている」 地元で歩いていると子どもたちに「黄色のおじさん」と呼び止められ、親しまれていると話す。