”黄色のおじさん”の市長選 720万円失うも「三度目の正直」目指した、76歳の14日間
Q.議会を頻繁に傍聴するようになったきっかけは…
「十数年前に地元の公園整備のために署名活動をして、市議を通じて市に要望したことがきっかけ。そのときから議会を見始めて『おもしろいな』と思った」 太田さんが3回の市長選で掲げてきた公約は一貫している。前名古屋市長の河村たかしさんが在職中に推し進めようとした「名古屋城天守の木造復元事業」の計画中止だ。天守の復元事業にかかる500億円を公園や河川整備などによる街づくりのために充てるべきだ、と訴えている。今回は河村さんの後継者が立候補していることもあり、事業推進の流れをストップさせるべく選挙に立った。 立候補には供託金として240万円が必要で、得票率が10%以上だと返還されるが、満たなければ没収されてしまう。太田さんは過去2回の市長選で480万円を没収されている。
Q.3回目の立候補、供託金が1回の立候補で240万円。計720万円になる…
「240万円は安くないよね。お別れすることになるから悩む。河村さんみたいに”選挙モンスター”で当選するなら返還されるけど、俺には返ってこねえもん。妻からは『貯金を減らして何やっているの』とか言われちゃっている。でも、うちは夫婦で財布は別々だから、最終的には自分の判断。立候補の期限が迫ったら『行くぜ』って出た」 妻は立候補に反対の立場だが、選挙期間中は演説を終えて帰宅した太田さんに「のどが痛いでしょ」とのど飴をくれたり、「早く休んだらどう?」と声をかけてくれたりして気遣ってくれているそうだ。太田さんは「そういうサポートや優しさを見せてくれる」と少し照れた様子で話し、「それでも、『出るな』とは言われる」と付け加えた。
■選挙戦初日がスタート
市長選が告示された11月10日、過去最多に並ぶ7人が立候補した。太田さんは届け出後の午前10時前、名古屋市役所の前で最初の演説に臨んだ。 候補者の”第一声”演説は「選挙戦のスタート」で、報道機関にとって各候補者が何を訴えて選挙戦に臨むのかを有権者に伝える大事な取材だ。太田さんの第一声を取材するためマスコミ各社が市役所前で囲んだ。